第五章
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負あったかに思えた。
「いけえ、そのまま押し切れ!」
だがロッテは不自然なまでに粘った。何とその回岡部明一がツーランを放ったのだ。
「しぶといな」
仰木はそれを見て呟いた。そして吉井をマウンドに送った。
吉井はヒットを許しながらも後続を抑えた。そして八回表近鉄の攻撃となった。
バッターボックスに立つのはブライアント。ここまで近鉄を引っ張ってきた男である。
そのブライアントが打った。打球はそのままスタンドに突き刺さった。
「これで決まりじゃあっ!」
観客席は総立ちとなった。ブライアントはその歓声の中ゆっくりっとベースを回る。彼はその派手なアーチに似合わず物静かな男であった。
これで勝負は決まった。誰もが思った。だが運命の女神は何処までも残酷であった。
「ここで決める」
仰木はマウンドに阿波野を送った。第一試合と同じくリリーフでだ。
「俺が最後ちゃうんかい!」
それに怒ったのが吉井であった。彼はストッパーである。その彼を投げさせないとは。吉井が怒るのも無理はなかった。だがそれを権藤が止めた。
「落ち着け」
「しかし・・・・・・」
「これもチームの為だ。わかったな」
「・・・・・・はい」
権藤は投手陣から全幅の信頼を寄せられていた。彼の指導の下投手陣は立ち直ったという実績もあった。
その権藤に言われ吉井は落ち着きを取り戻した。そしてロッカーに引き揚げて行った。
たら、やれば、という言葉は野球にはないと言われる。だが若しこの時吉井だったならば。運命の女神はどういう配慮を示したであろうか。
阿波野は愛甲を何なくサードゴロに打ち取った。そして打席には四番の高沢秀昭を迎える。
俊足巧打で知られる。落合博光が去った後はチームの四番を任されていた。
その彼を打席に迎える。阿波野の顔が急に張り詰めたものになった。
「どうするべきか」
彼は迷っていた。だがまず投げたボールは外れた。
そしてスクリューを投げる。今日最も調子のいいボールだ。高沢はそれを空振りした。
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