ALO編
記憶なき者@
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俺が目覚めてから、1ヶ月が過ぎた。長かった白銀の髪はゴムでまとめている。あれから少しずつからだの方は動けるようになってきている。
しかし、病院から出ることなく今は病室のベッドに寝ている。
『記憶、障害?』
『ええ、検査の結果、脳にダメージがあることが確認されました。記憶障害が出たのはそのためかと・・・』
『戻るんですか?』
『幸い、ダメージは深刻なまでにはいっていません。時間が経てば戻るかもしれません、少しずつ戻していきましょう』
『・・・はい』
それから1ヶ月、俺が思い出したのは自分の名前はもちろん、16歳までの記憶、自分に起こった事故について、そして今の状況について。
ここまで戻せれば医者は十分だとは言っていた、正直俺もそう思っていた。
しかし───。
『何か、足りない・・・』
俺は忘れている、この二年間を。寝ていたのだからどうでもいいとは最初は思っていた。しかし、ある日のこと、それは違和感へと変わった。
俺は棚に置かれているヘルメットのようなものに目をやる。俺が目覚めたときに被っていたナーヴギアだ。なぜ俺はこれを被っていたのだろうか。俺は疑問に思っていた。
「・・・散歩するか」
俺は体を起こし、近くに置いてある車椅子に器用に乗り換えた。
「んしょ、さて」
ちなみに俺の下半身は動かない、どうやら事故にあった時に麻痺したらしい。
しかし、全く動かないわけではない。立つことは出来ないが、多少は動ける。
「あら、雪羅さん。散歩ですか?」
「ええ、外の空気でも吸いたいなって」
「そうですか、ご一緒しましょうか?」
「いえ、大丈夫です。これもリハビリですから」
看護師の人とは仲良くやっている、世話になっているうちに色々と話すようになって今では看護師の間では噂となっている。
「昨日は患者様とキャッチボールしたんですよね?」
「ええ、小学生の男の子と」
「楽しんでましたね」
「何か落ち着くんですよ、ボールを握ってると・・・」
「そうですか・・・」
「さて、それじゃあ行ってきますね」
「はい、お気をつけて」
看護師の人と別れると俺はエレベーターに向かおうとした。
その途中、俺はある病室に止まった。
俺と同様、かなり前から目を覚まさないと看護師の人が言っていた。
『雪宮・・・雫・・・』
中に入ると、そこには一人の少女が眠っていた。
長く伸ばした黒い髪、掛け布団から覗かせる細くしなやかな指、彼女は今も眠っている。
俺と同じナーヴギアを被って───。
「・・・・・」
俺は定期的にここに来ている、なぜかは俺にも分からない。定期的に来ては花の水を変えたりしている。
今日も水を取り替えようと
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