『"Cannibal Candy"』
#5
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に向かって言った。
「俺達は何を差し出せばいいんだ?」
ライシンが当然の疑問を口にする。すると、フェリクスは何枚かの写真を取り出し、こちらに差し出してきた。そこに移されていたのは、胴体の中央部――――ちょうど、生命の源たる《イヴの心臓》が搭載されるあたりをくりぬかれた、自動人形たちだった。
「これは……」
「この学院で、去年の十月ごろから、行方不明になっている学生が26人いる。あわせて、破壊されたオートマトンが見つかったのが十二件。まるで切り裂きジャックのような手口だ……。この学院は厳しいから、夜逃げする生徒もいる。だが、しかしこのようにオートマトンが破壊されているのは不自然だ。なにせ《イヴの心臓》と魔術回路だけがなくなっているんだからね。彼らは全員が強かった……つまり、逃げ出す理由何てほとんどなかったんだよ」
写真を見せられたライシンと夜々が、悲しそうな表情をする。ライシンと夜々は、人形を一個の人格として扱う。もちろん、クロスもこんなものを見せられて気分はよくならない。
ライシンが呟く。
「……誰がこんなことを……」
「これらは全て、一人の人形遣い、《魔力喰い》の仕業と思われている君に奴を見つけて、倒してもらいたい」
なるほど。確かにオートマトンに開けられた穴は飴玉の様な球形だし、何よりもその《捕食》とでもいうべき光景は、《人食い》によく似ていた。
「……一つ聞こう。なぜ俺達なんだ?」
クロスは、フェリクスに疑問をぶつけてみる。フェリクスは今ばかりはあの張り付いたような笑みではなく、真剣な表情で答えた。
「理由は主に二つ。一つは、君達が《魔力喰い》ではないのが確実である事。君たちは学院に来たばかりだ。去年から活動している《カニバル・キャンディ》とは無関係だと推測される。もう一つは、君たちが十分に強いという事。――――昨日の戦い、見せてもらったよ」
あれを見ていたのか……クロスは、このフェリクスと言う男が、自分たちがやってきた時点で利用する腹積もりであった事を悟った。なるほど。確かに自分たちはこの学院に来たばかりで、《魔力喰い》である可能性は無いに等しい。この学院にいる人物は、全て《魔力喰い》である可能性を持った人物だ。その中にあって、自分たちは数少ない『その可能性が皆無な人物』だ。
となると、後は、上位の学院生すら倒せる恐るべき《魔力喰い》と戦えるだけの強さを持っているかを図らなくてはならない。だから、自分たちとシャルが戦うと聞いて、実力を見極めるのには好都合だと判断したのだろう。
クロスがそこまで考えた時
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