『"Cannibal Candy"』
#5
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ことを許されているのは、《魔王》の称号を得た者のみ。
全ての魔術回路を『見る』ためには、あの《禁書》を閲覧する必要も出てくるだろう。クロスは《魔王》になること自体にさほど興味はないが、それによって得られる《禁書閲覧》の特権だけは欲しいものであった。
ちょうどその時、カーン、コーン、カーン……と、授業の終了を示すチャイムが鳴った。クロスは読んでいた資料を基の場所に戻す為に立ち上がる。それと同時に、ドアががちゃり、と開き、見覚えのある男が入ってくる。
「……フェリクス・キングスフォート」
「やぁ、クロス。ここにいると思っていたよ。さぁ、ライシンと交えて話を使用じゃないか。ここじゃ難だ。風紀委員長室まで案内するよ」
***
「……?」
次の授業のために、別の教室まで移動していたシャルは、ふと窓の向こうに見知った頭が三つあるのに気が付いた。
ひとりはフェリクス・キングスフォート。学院の治安を守る《風紀委員》総括で、時折シャルに声を掛けてくれる爽やかな美男子だ。
もう一人はライシン・アカバネ。馬鹿の中の馬鹿。本物の馬鹿。
そして最後の一人は――――クロス・スズガモリ。
「何であのバカたちがフェリクスと一緒に……?」
「気になるのか」
「ば、馬鹿じゃないの!?」
からかうように問うたシグムントをしかりつける。階段の手すりに泊ったシグムントの表情は、どこか面白いものを見るような色を含んでいた。
「明日からグリーンピースを食べさせるわよ!!……確かに、フェリクスはいつも優しくて紳士的だけど……」
「いいや。フェリクスのことではない。彼ら……クロスとライシンの方だ。彼らは面白い人間だ……。昨日、私の傷に最初に気付いたのはライシンの方だった。そして……覚えているか。クロスは、今朝方で会った時、こういったのだ。『シグムント。昨日は災難だったな。……調子はどうだ』とな」
別に自動人形の調子を気遣うのはさほど珍しい事でもない。
「それが何なの?」
「彼は私を、一個の知性として扱ったのだ。本来ならば、あれはシャル、君に言うべき言葉だったのだ。『お前の人形、調子はどうだ』とな。……ライシンもだ。彼は自分の人形と、丸で一人の人間のように接している」
「……」
シグムントはなおも続ける。
「シャル。一つ聞きたい。彼らは君をかばった。もし彼らと戦うことになった時、君は戦えるか?」
「……私は、女王陛下から気高き一角獣の紋章と、北の領地を賜ったブリュー家の令嬢よ。邪魔者は誰であろうと叩き潰すわ。……誰であろうと」
***
「では、取引の話をしよう」
ソファに腰かけたフェリクスは、ライシンとクロス
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