第三章
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第三章
それがまさかこの時に出るとは。誰もが予想しなかった結末であった。
「えっ、まさか!?」
それを見た北川も信じられなかった。こんなことが有り得るとは夢にも思わなかった。
だがそれは本当だった。その証拠に近鉄ベンチは最早お祭り騒ぎである。
「やった、やったぞ!」
中村が何回転もしながら跳び回る。その他のナイン達も一斉にベンチから出ていた。
「おおーーーーーーっ!」
北川も一塁ベースを踏む直前にガッツポーズをしていた。そしてそのまま満面の笑みでベースを回った。
「まさかこんなのを打たれるなんてな」
打たれた大久保はまだ狐に摘まれたような顔をしている。だが球場の爆発的な喜びの声がそれが真実であるということを教えていた。
北川は三塁ベースを回った。ホームでは近鉄ナインが総出で待っている。
「さあ、帰って来い!」
その中心にはローズがいる。このシーズン、打って打って打ちまくってチームに貢献してきた男だ。その彼が逞しい両腕で彼を待っていた。
そしてホームを踏んだ。ローズはその彼を抱き締めた。
「よくやった、優勝だぁっ!」
ローズと北川だけではなかった。ナインが一丸となってその歓喜の輪に加わっていた。
そしてそれは球場全体にも伝わっていた。近鉄ファンは皆総立ちでナインに激しい声援を送っていた。
「おい、こんな凄い結末あるかい!」
「夢ちゃうんか、これは!?」
「夢やない、見てみい、あの胴上げ!」
梨田が胴上げされている。前の年には最下位だったチームの監督が胴上げされているのだ。
「嘘みたいや・・・・・・」
梨田だけではなかった。ナインもファンも同じ言葉を口にした。
オリックスナインは無言で引き揚げていく。だが仰木はそれを見てはいなかった。
「ここでこんなのを見るとはな」
ただ梨田の胴上げを見ていた。いや、正確には胴上げを見ていたのではなかった。
彼はかって近鉄の監督を務めていた。その時のことは今でもはっきりと覚えている。
一度優勝した。その時には彼が胴上げされた。
「あの時のことは忘れたことはないが」
だが今は敵の、しかも敗軍の将として近鉄の胴上げを見ている。
「何故だろうな」
彼はポツリ、と言った。
「悔しくはない。負けたというのに」
自分でも不思議であった。むしろ別の感情がその胸を支配していた。
「正直ホッとした。最後にいいものを見せてもらった」
そう言い残すと彼はベンチから姿を消した。そしてこのシーズンの最終戦で彼はユニフォームを脱いだ。その時の相手は奇妙な因縁で近鉄だった。そしてオリックスと近鉄、双方の球団から胴上げされた。
かって最後の試合で二つのチームから胴上げされた監督は一人しかいなかった。阪急と近鉄の監督を務めた闘将西本幸雄。彼
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