第一章
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く長年のライバルである。その日このカードであったことも天の配剤であったのだろうか。
近鉄の先発はバーグマン、シーズン途中からやって来た助っ人である。長身から繰り出す速球とチェンジアップが武器だ。
だが四回のファーストを守る吉岡のエラーがもとで失点を許す。そこからは継投策に入っていった。
対するオリックスの先発北川智規は好投を続ける。試合はオリックス有利に進んでいった。
「あのエラーが痛いなあ」
観客達は試合を見ながら言った。今日は無理だろう、という声もちらほらしてきた。
しかし今シーズンそうした試合が幾度もあった。諦めていない近鉄ファン達の熱気は回が進むにつれて高まっていくばかりであった。
だがオリックスは順調に得点を重ねていく。このシーズン近鉄等に隠れて地味だったがオリックスの打線もよく打ったのである。
九回表、この回にも相川良太のソロアーチで一点入れたオリックスはなおもランナーを出して攻め立てていた。そこで近鉄の監督梨田昌崇が動いた。
「ピッチャー、大塚」
彼はそう告げた。近鉄のストッパー大塚晶文、一五〇を超える速球と落ちるスライダーが武器である。
「えっ、ここで大塚!?」
これには客席にいた殆どの者が驚いた。時折梨田はそうした継投をする。それで敗れたことも多いが試合の流れを変えたことも多い。
その時は流れを変えることを狙っていた。そして大塚はそれに応えた。
あえなくオリックスの攻撃は終わる。そして九回裏近鉄の攻撃が始まろうとしていた。
「おい」
ここで梨田はベンチに座っていたある男に声をかけた。
「はい」
その少し太めの男は顔を上げた。北川博敏、今シーズン阪神から移籍してきた男である。
阪神に入団当初は強打の捕手として期待されていた。だが中々芽が出ず近鉄にトレードに出された。当初は二年連続最下位のチームなので何の期待もしていなかった。
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