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八条学園怪異譚
第五十五話 百鬼夜行その十三

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「それで、なんですよね」
「空井戸になったんですね」
「井戸って実は伝染病の基にもなったりして危ない部分もあるから」
 衛生的に問題があるのだ、しかも井戸は枯れることもあるしそこに毒でも投げ込まれると大惨事になってしまう。
 それでだ、水道が普及してからはなのだ。
「この学園でも井戸はないわ」
「というか私井戸とか見たことないですけれど」
「私もです」
「水道はありますけれど」
「井戸になりますと」
「そうでしょ、私もね」
 茉莉也にしてもだというのだ、井戸というものは。
「お水が出る井戸はないわよ」
「ですよね、もう昔のものですよね」
「少なくとも今の日本では」
「そうでしょ、ないでしょ」
「はい、もう」
「使われている井戸は」
「そうした空井戸こそがね」
 まさにだというのだ。
「泉の候補地としてはね」
「一晩有り得るんですね」
「そうなんですね」
「そうなのよ。井戸は二つの世界の結び目でもあるから」
 このことも話す茉莉也だった。
「扉とか門と一緒でね」
「それ前も言われました」
「井戸については」
「終点にあるから」
 その空井戸はというのだ。
「そこにね」
「その終点何処ですか?」
「学園の何処ですか?」
「お寺よ」
 そこだというのだ。
「お寺ね、学園の中の」
「ああ、あそこですか」
「あそこの中の空井戸ですね」
「そうなんですね」
「あそこにもあるんですか」
「そう、だからね」
 終点のそこに行けばだというのだ。
「空井戸に入ればいいわ」
「わかりました」
「それじゃあ」
「そう、いいわね」
 茉莉也は二人に微笑んで話した、こうして泉のことも話した。
 そしてだ、そうした話をしつつ百鬼夜行の中を歩いていき。
 その終点に着いた、先頭を行っていたぬらりひょんは一同が寺に入るとこう言った。
「さて、今日もじゃ」
「楽しかったね」
「いい夜行だったね」
「うむ、よかったのう」
 ぬらりひょんはにこりとして仲間達に応える。
「またしようぞ」
「さて、それじゃあ」
「今度は」
 妖怪達も幽霊達も早速だった、百鬼夜行が終わると。
 それぞれ酒やら肴やら菓子を出してきた、妖怪達がそうした。
 そのうえで寺の中で宴会をはじめる、茉莉也はその中で二人に言った。
「はじまる前にね」
「空井戸の中に入ってですね」
「それで」
「泉かどうか確かめるといいわ」
 こう言うのだった。
「今のうちにね」
「井戸はあそこですね」
 愛実は寺の境内の隣りを指差した、そこがだった。
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