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八条学園怪異譚
第五十五話 百鬼夜行その十二
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「そうしたゲームは楽しめるわよ」
「女の子でもですか?」
「そうなんですか?」
「そうよ。自分が想われてて結ばれる」
 あえてこう言うのだった、ゲームにもよるが美化している言葉とは言えなくもない。
「彼氏をそっちに導いていくっていう風にゲームをしていくのよ」
「ううん、そうなんですね」
「そうしたやり方もあるんですか」
「そうよ。とはいっても私もね」
 まだ十七歳の茉莉也がここで言う。
「そうしたゲームの経験はないわ」
「うちのクラスの男子は結構あるみたいですけれど」
「十六歳でも」
「それでもですね」
「先輩は実は」
「そうなの、したことがないの」
 そうだというのだ。
「あくまでノーマルよ、今のところは」
「十八歳までは、ですか」
「普通なんですね」
「そうなの、普通のゲームだけだから」
 しているゲームはというのだ。
「普通の恋愛ゲームね」
「そういえばそうしたゲームが一般の機種に移植されたら」
「そうよね」
 ここで二人も気付いた、そうしたゲームが一般のゲーム機種、即ちプレイステーション等に移植されるとどうなるかを。
「普通の恋愛ゲームになるわよね」
「純粋なね」
「そうした場面がカットされて」
「逆に普通のキスシーンとかになってて」
「規制ね」
 一言で言えばそうなると話す茉莉也だった。
「それが入るから」
「というかそうしたゲームってそうした場面がないと純愛なんですね」
「恋愛育成ゲームになるんですね」
「豪華声優陣を用意したね」
 しかもこの要素まで加わるというのだ。
「裏名義が表名義になってるから凄いわよ」
「じゃあ声優さんもですか」
「楽しめるんですね」
「一応裏名義は生き別れの姉妹ってことになってるから」
 別人ということで済ませるのが暗黙の了解なのだ。
「一般機種の声優さんとパソコンの方の声優さんはね」
「その辺りは言わない約束ですか」
「そういうことになってるんですね」
「そうよ。まあそういう話は置いておいて」
 それでだとまた話す茉莉也だった。
「この泉のことね」
「泉ですか」
「そのことですね」
「そう、泉だけれど」
「今度はどういった場所ですか?」
「泉は」
「今回は文字通りなのよ」
 茉莉也は二人の問いにこう返した。
「泉なのよ」
「じゃあお池ですか」
「そこですか」
「いやいや、井戸なのよ」
 そこだというのだ、今回の泉の候補地は。
「空井戸ね」
「そういえば空井戸って前もありましたね」
「一回入りましたけれど」
「井戸もね。今はなくなったって言っていいけれど」
 水道が普及してそれでなくなってしまった、井戸がある場所は日本においてはもう僅かなものになってしまった。
「うちの学園にもあってね」

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