第八十四話 運が持つものその十五
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「これまでは」
「焦っていたわね」
「お姉様を何としても止めようとしていました」
「そうだったのね」
「そのことだけを考えていて」
「焦っていたわね」
「そればかりでした」
それがこれまでの彼女だった、神話の頃より。
「まさに」
「遅れはしなかったわね」
「急いでばかりでした」
つまりだ、気が逸りそれに気付くこともなくひたすらセレネーを止めようとしていただけだったというのだ。
だが、だ。それではだったのだ。
「ですがそれがいけなかったのですね」
「貴女は直線的なのよ」
「何をするにもですね」
「ええ、月の女神の特性はね」
性格的な特性だ、それは聡美だけでなくセレネーもだ。
「お互いにそうだから」
「それでだったのですね」
「直線と直線はぶつかり合うだけよ」
そうでしかないというのだ、互いに前から。
「だから貴女はお姉様を止められなかったのよ」
「剣士達に声をかけていくだけでは」
「その時によって様々な剣士がいるわね」
「今も」
「それは考えられてもね」
それでもだ、聡美は前から突き進むだけだ、同じくそうするセレネーを止められるかというと。
「お姉様の方が力は強いから」
「私よりも」
「正面からぶつかり合うと強い方が勝つわ」
「だから私は止められなかった」
「一人ではね、けれどね」
「アテナ姉様がおられてですね」
「ええ、それにね」
それに加えてだった。
「ペルセポネーもいるから」
「三人ならば」
「ええ、セレネー姉様より力が強くなるわ」
三柱の女神達を合わせた力だ、それに。
「女神は三人ならばね」
「エリニュスの方々の様に」
ギリシア神話における災いの女神達だ、彼女が女神達を唆したことからトロイア戦役がはじまったことは有名であろう。
「それ故に」
「三人ならばね」
女神達がだというのだ。
「ただ三人集まるだけではないわ」
「そうでしたね、私はそのことも忘れていました」
「焦っては駄目なのよ」
「そうでしたね。何とか終わらせようとする余り」
多くのことを忘れてしまっていた、聡美は己の失態に唇を噛み締めた。そのうえで苦い顔で智子に言うのだった。
今二人は鹿の前にいる、そこで言うのだ。
「そうしたことを考えるだけの余裕も必要なのよ」
「周りを見るだけの」
「例え死闘を繰り広げていても」
その中でもだというのだ。
「それの中で周りを見るだけの余裕が必要なのよ」
「そういうことですね」
「そうよ、覚えておいてね」
「これからはですね」
「ええ、そのうえでね」
「はい、それでは」
聡美は鹿達、柵に覆われたその中でくつろいでいる彼等を見ながらそのうえで言うのだった。
「そうしていきます」
「それじゃあね」
智子も鹿
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