第二章
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第二章
鈴木は復活してきていた。そしてその年は久し振りに自分でも納得できる成績を残した。当時パリーグは前期と後期に分かれていてそれぞれの優勝チームがプレーオフで優勝を争っていたがその後期に優勝したのだ。
プレーオフは惜しくも敗れた。しかしであった。
鈴木はその後期優勝の胴上げ投手になった。その時にわかったのだ。
「この人はちゃうんやな」
その西本を見て呟くのだった。
「本当に俺のことを思って言うてくれてたんやな」
そのことがわかったのである。こうして彼は西本の本当の人間性を知ったのである。
そうしてである。鈴木は遂に二百勝を挙げた。名球界に入ることができたのだ。
だがそれで終わりではなくだ。彼はさらなる上を目指せる場所にいた。
三百勝だ。二百勝よりさらに上だ。そこだと言われてである。
リーグ優勝も二度経験できた。西本は近鉄をも優勝させたのだ。そして鈴木はその三百勝が見えてきていたのだ。
「速球から技巧になってな」
「変わったからな」
「そうだよな」
ファンもマスコミもここで彼について話すのだった。
「速球の他はカーブとフォークだけだったのにな」
「スライダーとシュートも覚えてな」
「左右の揺さぶりも身に着けたしな」
それが大きいのだった。今の彼はかつての彼ではなくなっていた。
その彼にだ。西本は言うのだった。
「スズ、御前にはまだやることがあるんや」
「やることがですか」
「まずはファンの為にや」
最初は彼等の為だという。
「そしてチームの為」
「近鉄の為ですか」
「そしてこの球界の為にや」
彼にはやるべきことがあるのだというのだ。
「やることがあるんや」
「それは何ですか?」
「三百勝や」
まさにそれだというのである。
「三百勝や、それを達成するんや」
「二百勝で終わりではなくですか」
「そうや、三百勝するんや」
こう彼に告げるのである。
「ええな、それをやるんや」
「俺が三百勝ですか」
「辛いか?」
鈴木が戸惑いを見せるとだった。彼に静かに問うてきた。
「それは辛いか?」
「わしももう歳ですし」
三十をとうに超えている。引退してもおかしくない。辛いのは自分が最もよくわかっていた。
「やっぱりそれは」
「楽な道へは何時でも乗り換えられるんや」
しかし西本はここでこう彼に告げた。
「けれどな、それでもや」
「辛い道にですか」
「そこに行くんや」
こう鈴木に言うのである。
「それが今の御前にして欲しいことや」
「わしにですか」
「御前やったらできる」
西本はまた彼に告げた。
「絶対にな」
「じゃあわしは」
「三百勝や」
まさにそれだというのだ。
「三百勝するんや、ええな」
「わしにできるでし
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