決戦2
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しも、かかしもねえ。いいから言われたとおりにしろ!」
カッセルの言葉により、迫撃砲の照準は敵の後方に爆撃を始める。
高射砲を備えつけようとしていた兵士達が慌てて避難した。
だが。
接近する敵兵士によって、前線基地の防御はさらに薄くなり、放たれた銃弾が幾人をも貫いた。
悲鳴をあげて倒れる兵士。
駆け付ける衛生兵。
それらをあざ笑うように放たれた砲弾が、血しぶきをまき散らす。
地獄といえども、少しの慈悲はあるだろう。
慈悲すらない光景を前にして、兵士達はただ銃を放ち続けるだけだ。
狙いも何もない、ただがむしゃらに。
撃ち続けた弾丸がなくなり、身体を探る。それすらも見つからず、死体を漁った。
倒れ伏す同僚から得た弾丸で、再び銃を構える。
その瞬間に、構えた兵士は頭部をレーザーに焼かれて息絶えた。
誰がも自分の事で精一杯だ。
久々に感じる戦場の空気に、バセットは唇を舐めた。
誰もが自分のことで精一杯だからこそ、自分はそうあってはならない。
そう今は亡き上司に教えられた言葉を思い出して、バセットは周囲を見渡す。
防戦をするあまり集中して、塹壕から身を乗り出す者はいないか。
あるいは。
「狙いは敵後方っていってるだろう。勝手にかえるんじゃねぇ、ぼけがっ!」
身近に迫る脅威に狙いを変更しようとしていた砲兵を叱咤して、バセットは周囲を見る。
既に限界であることはわかる。
アレスがカッセルに話していた事を聞かなかったわけじゃない。
まずいという言葉、その通りになろうとしている。
今までは左右からの連携で近づかせなかった敵歩兵が近づいている。
こちらも反撃をしているが、多勢に無勢。
よく持ったと思うべきか。
でも。
周囲を見渡しながら、バセットが見るのは正面に立つアレスの姿だ。
本来であれば後方で指揮をとるべき指揮官が、最前線で敵の進撃を防いでいる。
それだけではなく時には後方に目を光らせて、ともすれば撃ち過ぎて砲身が自爆しそうな迫撃砲を交換するように指示を出している。
とても初戦には思えない。
敵の集中砲火を浴びてもなお、いまだに戦線が崩れないのは彼の力量によるべきか。
もはや認めざるを得ない。
だからこそ。
「死なせるわけにはいかないだろう!」
バセットも塹壕から身を乗り出せば、近づく帝国兵に砲火を加えた。
その視界に赤毛の男が見える。
獣を思わせる勢いで近づけば、手にしたものを投げた。
それは放物線を描いて、塹壕の奥深くへと届く。
「まずい」
それは見なくても、理解ができる。
塹壕の奥で爆発したプラズマ手榴弾は、容赦なくこちらの防御を抉るだろう。
敵の侵入を許す事になる
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