暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
決戦2
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 彼女の腕であれば、飛べない事はない。
 だが、副操縦席の同僚の言葉通り、文字通り飛べると言うだけの状況。
 敵も高射砲や対空砲など、空に対する備えは万全だろう。
 その状況で突入したとしても、集中放火を受ければ一矢報いる前に撃墜されてしまう。
 ほんのわずかでも状況が確認できれば。

 そのわずかな状況確認の隙間すらも、厚い雲は許さなかった。
 唇を噛む力が強くなる。
 いまも続いているであろう戦闘に、自分は何の助けも出来ない。
 感情的になろうとする心を落ちつけて、彼女はレーダーを確認する。
 まだ大丈夫だ。

 だが。
「このままでは敵の援軍が来るかもしれない」
「違うね。おそらく、来ている」
 否定された冷静な言葉に、彼女は隣の席を睨んだ。
 鋭い視線を受け止めながらも、副操縦席で男は首を振った。

「こちらの援軍要請を敵さんが知らないわけがない。今頃カプチェランカ外周にきて、こちらに回り込んでいる頃だろうさ」
「ますます時間がないわ」
「ああ。いま出発できなければ、おそらく撤退命令が出るだろう」
「それなのに随分と落ち着いているのね」
「仕方がないことだ。いま撃墜されれば、次に誰が敵を攻撃する?」

「その次、その次と、年金をもらうまであなたはそう言い続けるつもりなの」
「挑戦的な言葉だな」
「本音よ」
 手元のモニターに目を向けて、彼女は息を吐いた。
 厳しい言葉をぶつけたが、男の言っている言葉も間違えてはいない。
 無駄死にをするくらいなら、次のチャンスを待つべきだ。

 それが理解できているからこそ、彼女も待つ事を選択せざるを得ない。
 でも。
 頭で理解できていても、感情は別だ。
 この状態を彼女の――先輩が、そして、後輩が見れば何というだろうか。
 仕方がないと諦めるか。
 いや。

 コンソールに伸ばそうとした手を、寸前で彼女は飛ばした。
 彼女だけが死ぬのであれば、おそらく彼女は押したであろう。
 だが、彼女の手には憎らしいことだが、隣の副操縦士と、そして兵士の命が握られている。
おいそれと、簡単に行動が出来る立場でもない。
 そんな状況を、彼らは笑うか。

 自らが自嘲の笑いを浮かべかけ、外部のモニターに通信が入った事が告げる。
 それは全体への一斉メッセージだ。
 一拍の呼吸を経て、おそらくは戦場であろう精悍な顔をした男が映った。

『カプチェランカから、ラフロフ――カプチェランカから、ラフロフ……こちらカプチェランカ基地司令官クラナフ大佐だ』

 + + +

『敵の襲撃から三時間。現在まで、敵を基地広場内でとどめているが、敵がこちらの策に気づいたようだ。既に左翼部隊の攻撃機能が八割を奪われ、前線基地が孤立している。おそらく
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ