決戦2
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彼女の腕であれば、飛べない事はない。
だが、副操縦席の同僚の言葉通り、文字通り飛べると言うだけの状況。
敵も高射砲や対空砲など、空に対する備えは万全だろう。
その状況で突入したとしても、集中放火を受ければ一矢報いる前に撃墜されてしまう。
ほんのわずかでも状況が確認できれば。
そのわずかな状況確認の隙間すらも、厚い雲は許さなかった。
唇を噛む力が強くなる。
いまも続いているであろう戦闘に、自分は何の助けも出来ない。
感情的になろうとする心を落ちつけて、彼女はレーダーを確認する。
まだ大丈夫だ。
だが。
「このままでは敵の援軍が来るかもしれない」
「違うね。おそらく、来ている」
否定された冷静な言葉に、彼女は隣の席を睨んだ。
鋭い視線を受け止めながらも、副操縦席で男は首を振った。
「こちらの援軍要請を敵さんが知らないわけがない。今頃カプチェランカ外周にきて、こちらに回り込んでいる頃だろうさ」
「ますます時間がないわ」
「ああ。いま出発できなければ、おそらく撤退命令が出るだろう」
「それなのに随分と落ち着いているのね」
「仕方がないことだ。いま撃墜されれば、次に誰が敵を攻撃する?」
「その次、その次と、年金をもらうまであなたはそう言い続けるつもりなの」
「挑戦的な言葉だな」
「本音よ」
手元のモニターに目を向けて、彼女は息を吐いた。
厳しい言葉をぶつけたが、男の言っている言葉も間違えてはいない。
無駄死にをするくらいなら、次のチャンスを待つべきだ。
それが理解できているからこそ、彼女も待つ事を選択せざるを得ない。
でも。
頭で理解できていても、感情は別だ。
この状態を彼女の――先輩が、そして、後輩が見れば何というだろうか。
仕方がないと諦めるか。
いや。
コンソールに伸ばそうとした手を、寸前で彼女は飛ばした。
彼女だけが死ぬのであれば、おそらく彼女は押したであろう。
だが、彼女の手には憎らしいことだが、隣の副操縦士と、そして兵士の命が握られている。
おいそれと、簡単に行動が出来る立場でもない。
そんな状況を、彼らは笑うか。
自らが自嘲の笑いを浮かべかけ、外部のモニターに通信が入った事が告げる。
それは全体への一斉メッセージだ。
一拍の呼吸を経て、おそらくは戦場であろう精悍な顔をした男が映った。
『カプチェランカから、ラフロフ――カプチェランカから、ラフロフ……こちらカプチェランカ基地司令官クラナフ大佐だ』
+ + +
『敵の襲撃から三時間。現在まで、敵を基地広場内でとどめているが、敵がこちらの策に気づいたようだ。既に左翼部隊の攻撃機能が八割を奪われ、前線基地が孤立している。おそらく
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