決戦2
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す。左翼の戦線が崩壊後は、すぐにこちらにも来るでしょう。その時に助けは期待できそうにありませんね」
「そりゃあ」
攻撃の集中する左翼防御陣を他人事のように見ながら、カッセルが息を吐く。
「面白くない話ですね。今まででも十分辛い。いっそのこと逃げますか?」
「どこにです?」
「さて。塹壕を走って、山の獣道を歩けば、運が良ければ生き残れるでしょうな」
「運に任せるのならば、助けが来る方を信じたいですね」
苦笑しながら、アレスは塹壕に腰を下ろす。
空を見上げる。
曇天の空は吹雪こそ止み始めているが、いまだに太陽は顔をのぞかせない。
発進すれば数分で来るであろう航空戦力は、いまだに来る気配すらなかった。
少しの休息に、今まで忘れていた疲労と乾きが思い出される。
脇から雪を手にして口に含んだ。
乾いていた唇が、ほんのわずかに潤った。
視線を感じれば、カッセルがこちらを見ていた。
油断するなと激を飛ばしているバセットにも疲労の色が強い。
アレスとカッセルが話している様子に、幾人かが気がつく。
誰もが疲労を浮かべる様子に、アレスは冗談めかして肩をすくめた。
「敵が休めというならこちらもゆっくり休みましょう。元より時間稼ぎが任務――このまま援軍が来るまで休みましょう」
突然塹壕に響くようなアレスの言葉に、気付いたようにカッセルが眉をあげた。
「その援軍はワインも運んでくれますかな」
「きっとね」
アレスの意図に気付いたように声を張り上げたカッセルに微笑を浮かべれば、アレスは空を見上げた。
援軍はまだ来ない。
+ + +
惑星カプチェランカから遥か数十万キロメートルも上空。
成層圏よりも更に上空に一隻の巡航艦が待機していた。
自由惑星同盟軍巡航艦――ラフロフ。
銀河帝国軍のそれとは違い、画一化して他の艦船とも違わぬ、特徴のない形状。
武骨な深緑色のそれは静かにカプチェランカ上空を漂っていた。
救援要請を受けたラフロフは、戦闘開始後二時間で上空へとたどり着いていた。
しかし、命令はない。
「まだなの」
「苛立っても仕方がない、らしくないな。天気図を見れば、今行くのは自殺行為だと明白だろう?」
「この雲の厚さならば、いけるわ」
「雲を抜けて、敵の高射砲と対空砲の集中砲火はごめんだ。言っても平気だっていう、確信が必要でね」
惑星飛行用の爆撃機の副操縦席で、男が肩をすくめた。
操縦席のモニターには惑星カプチェランカの天気図が表示され、雲の様子が逐一変わっている。天気自体は比較的落ち着いている。
もっともカプチェランカにおいての落ち着いているという事であり、吹雪はないものの厚い雲が惑星の――戦闘地帯の様子を隠している。
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