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三百勝
第一章
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 西本はベンチに戻った鈴木に対してだ。声をかけてきたのだ。
「おいスズ」
「んっ!?」
「あのピッチングを見とくんや」
 マウンドを指差して言うのだった。今は阪神戦である。マウンドにいるのは鈴木と同じ左腕の山本和行である。まだ四年目のピッチャーである。
 そのピッチャーを指差してだ。さらに話すのだった。
「あのピッチャーの球は御前より遅い」
「それがどないしたんでっか?」
「それでもすいすい投げとる」
 彼を指差しながらさらに話すのだった。
「御前はあのピッチャーより球が速いけれどもう打たれた」
 そして。
「あいつをよう見て投球術を見習うんや」
 ここまで聞くとだった。もう鈴木は完全に切れてしまった。今までチームをエースとして引っ張ってきた自負があった。それを傷付けられたと思ったからだ。
 それで鈴木は完全に切れた。そのまま踵を返しそのうえで引き揚げてしまった。その直後フロントにトレードを直訴した。
「あんなおっさんの下ではやっとれませんわ!」
「いや、そう言わないで」
「ここはだな」
 フロントも慌てて彼を引き止めにかかった。
「西本さんも西本さんの考えがあるだろうし」
「ここは」
「我慢せいっていうんですか」
「まあここはね」
「そうなるね」
 とにかくここは鈴木を宥めたのだった。この場は何とか収まった。そして西本はこれで終わったかというとそれでもまだ彼に言い続けていた。そうしているうちにだ。

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