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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第51話 「男子の名前」
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っ張って、逃げるラインハルト様。
 いったい何をやっている事やら……。
 はぁ〜ため息が出てしまいます。

「大丈夫?」
「大丈夫?」

 ザビーネ様と(決してあのショタではない方の)マルガレータ様がわたしの頭を撫でてきました。
 そしてお互いににらみ合います。
 ばちばちと火花が飛びそう。これこそ、どうしてこうなった。
 声を大にして叫びたい。

「両手に花で結構な事じゃないか、三角関係の物理的解決は、よそでやってほしいがな」

 宰相閣下がこちらをチラッと見ながら、そんな事を言い出す。
 なんてお方だろう。
 極悪非道を絵に描いたような人だ。
 ひどい。ひどすぎる。
 こんなお方を相手にしなければいけない同盟が、かわいそうになってきました。
 きっと向こうも頭を抱えている事でしょう。けっ。
 わたしもずいぶんやさぐれてしまったものです……。
 お父さんお母さん。ジークは悪に染まってしまうかもしれません。

 ■フェザーン自治領 ブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒ■

 皇太子殿下にこどもが生まれてからというもの、帝国は祝賀ムードが漂っている。
 ここフェザーンでも、街中のあちらこちらで、宴会が繰り広げられていた。

「空気が明るいな」
「確かに」

 俺がそう言うとオーベルシュタインも同意する。

「つい先ほどまでの緊迫した空気が嘘のようだ」
「緊張続きだった反動だろう。しかし宰相閣下の話題はどこかしら、明るさがある」
「振り回される同盟はたまったものではないだろうが、あのお方の動きに銀河が振り回される」

 帝国にとっては良い方向に、同盟にとっては悪い方向に振り回されている。
 まああのお方は、銀河帝国宰相だからな。
 帝国にとって良くなるように動くのは不思議な事ではない。

「そのたまったものではない同盟は、先ほどの強行軍の所為で、軍が責められているそうだ」
「ああ、その話は聞いた」

 オーベルシュタインが書類を手に取りつつ、言ってくる。
 同盟にとっては良い手だったのだが、それを理解できない市民とやらが騒ぎ立てているらしい。

「同盟は……いや、これは帝国も同じかもしれないが、戦争とは派手なものだと思っているみたいだ」
「実際は地味で泥臭いものなのだが、な」
「ブルース・アッシュビーのせいだ。あれはまるで大スターのようだったらしい。その印象が強すぎるのだろう」
「分かりやすい形で勝つ。それも完勝する。しなければならない。そんな事はありえないのだが」
「だがやった者がいる。いる以上出来る筈だと思う」
「帝国はそのような感覚が薄れだしている。同盟と帝国では意識がかなり違ってきている」

 確かに帝国ではそのような感覚はない。
 なくなってきて
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