ヘルヘイム編
第1話 咲とヘキサ
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「さっばいばるゆー がっむーぶ♪ げんだいはさながらせーんごっく♪」
咲は最近のお気に入り曲を口ずさみながら、ダンススクールの教室のガラス戸を開けた。
「こんにちはー」
「へい、らっしゃーい」
それは寿司屋です、とすでにツッコむ者もいない講師の出迎え口上。
咲も答えず、一面鏡張りの教室の一角で、フローリングに固まった2人組の女子へと向かう。
「おひさー。元気してた?」
「してた。むっちゃしてた」
「今日の“ビートライダーズホットライン”観る〜?」
「見して見して〜」
咲はトモからタブレットを借りて観た。
いつものブースでDJサガラが盛り上がっている。
「咲、どこ派だっけ〜?」
「蒼天。ナッツは」
「POPUP」
「よね」
例の合同ダンスイベントから、“ビートライダーズホットライン”は純粋な情報配信番組に変わった。あのイベントで多くのチームは解散したが、ダンサーチームとして生まれ変わったビートライダーズにとっては、それもまた良しとするところだ。
そこまで考えたところで、ガラス戸が開いて男子が二人入って来た。
「おー、咲が先にいた」
「……元気そう」
「モン太、チューやん、イェーイ」
「ウェーイ。何ソレ、ランキングか?」
モン太がトモのタブレットの画面を覗き込む。
「こら」
「あう」
ナッツが咲のほっぺを指で押した。
「あんたはまーた下らないことナヤんでるでしょー」
「ふだらなふないよー」
「どうせユグドラシル・コーポレーションのことだろー?」
モン太にまでバレた。咲は観念して肯いた。
仲間には全てを打ち明けている。人間がインベスになりうることと、咲が実験体だったことを除いて。
「合同イベントの時、何で助けてくれたんだろうなあ、って。DJサガラはユグドラシル・コーポレーション側なのに」
「咲とか葛葉のにーさんの味方してくれてんじゃね」
「そんなカンタンでいいのかなあ」
自らをユグドラシル側だと名乗った彼を全面的に信頼するには抵抗がある。
「こんにちは」
上品な声。咲はたった今までの思案を忘れて勢いよく顔を上げ、その顔を輝かせた。
「ヘキサ!」
「久しぶりね、咲。元気そうでよかった」
「もうチョー元気だよぉ」
咲は立ち上がってヘキサに飛びついた。ヘキサは笑顔で咲に抱きつき返した。
「ヘキサが来たとたんにこれかい。あんたらの仲の良さには顔負けだわ」
「……ユリフウフ」
「チューやんあとでちょっと屋上来て」
今日もリトルスターマインは通常運転である。
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