侵略計画 〜夏目another side〜
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「あ、あんたが家族を滅茶苦茶にした……の?」
「ええ、そう。あたしがしたも同然よ」
「――くっ、夏目……春香ぁっ!」
雪村梢の目に迷いはなかった。あたしを殺すつもりで魔法を詠唱し始めた。
でも――
「っ――?」
詠唱は途中で止まった。いや、あたしが止めた。
「あなた馬鹿でしょ。あたしの家なんだからさあ、魔術師のテリトリーではその主は無敵なの知らなかった?」
そう、魔術師が根城として決めた場所はその魔術師の最後の砦となる。だから魔術師の家は対外的にも対内的にも様々な魔術が施されている。
あたしの場合、無詠唱である程度のレベルの魔法を放つことができるようになっている。
「まあ結局実戦慣れしていないゆえのミスよねえ」
「このっ……」
梢は魔法が無理ならと肉弾戦を仕掛けてきた。素早いスピードであたしの懐に潜り込み――――そしてあたしの胸にあてようとしたのであろうその拳は、届くことなく崩れた。
あたしは無詠唱で魔法を使用できるんだから、眠らせるくらい一瞬だった。
「魔術師が魔術の力を封じられた時点で負けなのよ、覚えておきなさい。もっとも、もうあたしの声は届いていないのだろうけどね」
すやすやと静かに眠っている雪村梢を見て、
――ああ、もっと痛めつけておけばよかったかな?
なんて思ったあたしだった。
でもこいつに傷をつけることは最後までできなかったはずだ。夏目春香の深層心理は絶対に人を傷つけまいとしていて、あたしはその心理に背くことができなかった。本当にこの体は使いにくいったらありゃしない。肉体の主導権を奪われてもなお、あたしの邪魔をしてくる。
夏目春香、なんてただの人形のくせに。
ただの人形の心があたしを邪魔する。
いつになったら夏目春香の自我は崩壊するのだろう。
でも今はそんなこと考えている暇は無い。
なぜなら――
(もうすぐあたしたち悪魔の侵略計画が最終ステージに入る。気を引き締めないと……)
計画を進めるにあたっての不安材料はいくつかある。
第一に魔術協会の存在。しかしあの協会は長年自分たちの時代が続き、安定していたからか、腐敗していき、今では年長者による権力闘争が絶えないだけの時代の遺物に成り果てていることが分かった。現にこうやって協会の人間を乗っ取っても全く怪しまれない。
第二はこの身体の宿主夏目春香の母、夏目真菜の存在。彼女は何を考えているのか全く分からない。なにかの団体に所属している形跡はなく、全てが謎に包まれている。現時点では世界でもっとも強い魔術師、ということしかわからず、警戒をしなければならないけれど、特に目立つ行動をしていない今の内は保留でいいだろ
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