暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
序章  はじまりの街にて
Ex2.異質なその人
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…?

 そんなこと考えもしなかった。こんな状況で、こんな場面で、そんなことを考え付くなんていったい何人いるのだろうか。
 あたしがそんなことを思っていると、あたしの背中からチマがその人に向かって言った。

「……な、なに言ってんスか! 危ないッスよ! ここで、安全な場所で外からの救出を待ったほうが――」
「救出は無いだろう」
「――な!?」

 チマの言葉を、チマの考えを真っ二つにするかのように、その人は言った。

「もし、俺が茅場晶彦の立場だったら……1パーセントでも、自分以外の外部の手によってこの状況を打破できる可能性があったのなら、そもそもこんなことを実行しないだろう。天才と呼ばれる人物なのだったら、尚の事そこは解っているはずだ。……ならば、茅場の言う通りにするしかない。このゲームをクリアして、茅場本人に開放してもらうしか……無い」

 確かにそうだ。あたしだって、自分が犯罪者になるかもしれないって分かってて、それでもしなければいけないことがあるなら、失敗の確立は出来るだけ無くしておきたい。そして無くしてからそれをするだろう。

「…………」

 その人の正論に、反論が出来なくなったチマが黙る。

「……俺は街を出てモンスターを倒す。レベルを上げて強くなる。……それが今、俺に出来る最良の事だと思うからだ」

 無表情にそう淡々と告げるその人。でもふと雰囲気を緩め、さっきとは違う、やや優しさを含んだ声で続けた。

「……だが、別に無理に戦おうとしなくても……街に留まっていてもいいとは思う。人には向き不向きだってあるだろう。戦いたいと思う者、戦う決意をした者だけが戦う。逆に戦いたくはない、戦いが怖い、死ぬのが怖い者は……無理に街を出なくても良いと俺は思う。本当の命が懸かっているのだから怖くて当然だろう。それを誰も責める事は出来ないし、逆に……俺のように外に出て行く者を引き止める事も出来ない。……自分に出来ることを考えて、それを行う。それが、今俺たちがすべきことだろうしな……」

 再び言った、自分に出来ること。この人は、きっとそれを見つけたから――ううん、それを見つける力を持ってたから、あんなにも輝いて見えたんだと、今更ながら思う。

「あ、あのっ……あなたは、こ、怖くないんですかっ……?」

 あたしの双子の姉――今はレイアが、人見知りで震えながら、それでも頑張って言った。
 その人は、数秒間レイアを、レイアの瞳を見てから、やや嘲笑めいた声で言った。

「……別に、死ぬのが怖くないわけではない。……ただ、俺はこの《SAO》の世界で出てくるどんな怪物よりも怖い存在を知っている。……俺が平然としているように見えるのは、恐らくそのせいだろう。それより怖い物なんて、想像できないのだから」

 
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