SAO編
序章 はじまりの街にて
Ex2.異質なその人
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仮想世界》から出れないと、HPがゼロになったら死んじゃうって言ってた。
「……あ、あ……ぁぅ……」
「な、なに言ってるんスかね、あの人……アハ、アハハ、ハ……」
あたしの横では、放心しているレイアと、あの言葉を否定したいのか、乾いた笑いをしているチマがいる。
あたしは周りを見回した。
多分、無意識に助けを求めていたんだと思う。
言葉では否定してるけど、あの人が言ったことは真実なんだって、あたしも美緒も佳奈美もきっと心で感じてる。
だから探した。
何をって訊かれても解らないけど……何か、この状況であたしたちに必要なもの、それを探していた。
でも、周りは想像以上に混沌としていた。
さっきまであんなに美しかった中央広場の風景は、喜怒哀楽の『怒』と『哀』で埋め尽くされていた。
その情景は、嫌がおうにもあたしの精神を更に打ちのめそうとした。
「…………え?」
そんな時、あたしは見た。
《その人》は、周囲が負の感情に呑まれている中、まるでそこだけスポットライトが当たってるかのように、一人平然と立っていた。
まるで、暗い沼地に咲いた一輪の花を思わせるような、こんな状況の中では異質とも言っていいような佇まい。
あたしには、それがどこか神々しくさえ見えた。
ふいに、その人がどこかに向かって歩き出した。
それを見たあたしは――駆け出していた。
「え? ネリー?」
「……ほぇっ!?」
後ろからレイアとチマの声が聞こえた気がしたが、今はコレがあたしが優先するべきなのだと頭の中で誰かが叫んでいた。
「――あ、あの……あのっ……!」
何を言おうかなんて考えて無い。だけどあたしは《その人》に声をかけていた。
でもその人は、あたしの声が聞こえなかったのか、その歩みを止めようとしない。
あたしはもう必死にその人の横に走っていって、再び声をかけた。
「あの! す、すみませんっ!」
「……?」
その人が、足を止めてこちらを見た。
それだけで、あたしは思わず息を飲んだ。
全てを見透かされそうな深い深い蒼の瞳。鋭く尖った氷を連想させるような表情。なによりその人からは《普通》や《日常性》といった、この状況においては“逆に”非常性を感じさせられるものがあった。
そんな理由であたしが放心していると、その人の口が開いた。
「…………何か――」
「ネリー!」
でも、その人の言葉に割り込むようにレイアがあたしを呼びながらチマと一緒に駆けてきた。
「ハァッ、ハァッ……もう、いきなり走りだして……」
「ヒー、ヒー……そ、そうッスよ! というかこんな場所で置いて行かないで欲しいッス!」
「ご、ごめんゴ
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