SAO編
序章 はじまりの街にて
3.己に出来る事
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ておくに悪いことは無い。
「……情報、感謝する」
恐らく、NPCには言っても意味は無いのだろうとは思ったが、俺は店主に礼を言い、店を出た。
「また来てくれよ!」
そう言った店主の声が、俺の背を空しく叩いた。
現在の時刻は、午後六時五十三分。
あの、茅場晶彦のチュートリアルというものから一時間以上が経った。
辺りはすでに夕暮れの赤は消え、藍色の薄暗さに包まれていた。
――さて、武器は手に入れたが、今日はもう暗くなっている。宿を探して休むか、もしくはこのまま街を出て戦闘を実際に経験してみるか。
俺は数分間考えたが、一度だけでも戦闘を経験してみようという結論に達した。
確かに視界はすでに暗く、よく見えない状態ではあるのだが、どんな状況でも戦えるようにしておくのは悪いことではない。
それに、ここは《はじまりの街》。つまり周りには弱い敵しか現れないだろう。
レベル1のプレイヤーばかりのところに、ありえないほど力の離れた敵を出すなどという理不尽は、流石の茅場もしないだろう……多分。
だったらそれは、初の夜戦の練習にも丁度いい。
俺は、ここから一番近いはじまりの街の北西ゲートへと歩を進めた。
今まで遊ぶことすらもせずに鍛錬を続けてきた槍術。それが《この世界》でどこまで通用するのかは解らないが、俺は今、自分がこんな状況下で再び高揚していることに気付いていた。
――祖父より鍛えられたこの槍技……試せる時が、来たようだ。
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