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早過ぎた名将
1部分:第一章
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打の実績がありながら今だにコーチの声すらない。テレビの稚拙で人格を疑うコメントを聞いていればそれは大いに頷けるものである。
 イチローは彼等とは全く違っていた。何時でもオリックスの柱となる存在であった。
 彼を中心としてチームは勝利を収めていった。主砲ニールに守備の達人馬場敏史、本西厚博、バランスのとれた田口壮等がいた。投手陣は阪神から移籍してきた野田浩司、メジャーでも活躍した長谷川滋利、不惑ながらこのシーズンノーヒットノーランを達成した佐藤義則、ストッパーには剛速球を誇るルーキー平井正史がいた。バランスのとれた戦力であった。
 そして率いるは知将仰木彬、近鉄の監督時代奇策で鳴らした男である。
 オリックスはそのまま独走するかに思われた。多くの人の心が彼等を後押ししていた。だがそこに立ちはだかるチームもあった。
 ロッテであった。千葉ロッテマリーンズ。万年Bクラスだったこのチームに太平洋を渡って一人の男がやって来たのだ。
 ボビー=バレンタイン。彼はメジャーの風をこのチームに運んで来たのだ。
「私が監督を務めるチームでは一つのことを最優先させる」
 彼はまず選手達に会うと言った。
「また勝つとかそんな決まり文句だろ」
 選手達はそう思っていた。彼等は何処か諦めきったムードを持っていた。だがバレンタインは違っていた。
「怪我人は絶対に出さない。これは絶対に守る」
 それを聞いた選手達は自分の耳を疑った。
「この人は違う」
 彼等はその時わかった。
「これがメジャーなのか」
 そう感じた。そしてそのメジャーの風を運んで来たもう一人の男がいた。
 フリオ=フランコである。メジャーでそのシェアなバッティングで知られた男である。彼は開幕戦何とスーツで千葉マリンスタジアムに現われた。
「え、スーツでですか!?」
 記者もファンもそれを見て驚いた。
「そうだよ。何かおかしいかい」
 彼は平然と答えた。
「いえ、それは」
 球場に何を着ていかなければならない、という規則はない。あるとすれば巨人位である。オーナー達の悪行でダーティーさを世の人々に知られているがそれには頬かむりし、球界の紳士を詐称する為にそうしているのだ。これに騙されるのは相当な愚か者だけであるが。

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