五章 幕間劇
久遠と一日買い物デート
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のに、そんな定番なのでいいのかと思った。
「じゃあ、このカステラ一つをもらえるかな?」
「はいはい。これと・・・・これで良いの?」
これとこれ?何だと思ったらカステラの脇にもう一つ、小さな包みが置いてあった。中身は鮮やかな砂糖の塊である金平糖だった。
「おい久遠?」
「もう一つ・・・・ダメか?」
何か上目使いを使ってきたな。しょうがないと思って、それも買ってあげた。
「結局どうするの、久遠?」
そして堺の町を散々歩いて、とうとう夕方になってしまった。
「どうするのはいいが、お前は買ったのか?一真」
「とっくに買ってるよ」
「何・・・・いつの間に・・・・!」
「久遠が真剣に選んでる時にこっそりと買った」
「むぅ・・・・ならやはり次で最後にする。こっちだ」
こっちだっていうと、最初に来た小物屋だった。久遠は櫛を買ったようだ。
「それと・・・・」
「なんでしょう・・・・」
「ここにあった蝶の簪は知らんか?」
「さあ。私は昼からの出だったもので・・・・朝の内に売れちゃったんですかねぇ・・・・?」
「なら分からんか・・・・」
「申し訳ありません」
「よい。無理を言ったな」
あの蝶の簪も買おうとしてたようだが、残念でした。俺が買ってしまったからな。
「久遠、久遠が買うと思ってこれを受け取ってほしい」
何だ?と思った久遠は、受け取った物の蓋をそっと開ければ、対になった蝶のかんざしだった。俺はあの時に、既に買っていたのさと言ったら照れていたけど。
「気に入らなかった?」
「この旅の土産だからな。美濃に戻ってから、結菜と一緒に付けてもらうことにする。・・・・良いか?」
「構わんさ。それにもう一つは結菜のために買ったからな」
「だが、先につけてもらうのは我だ。忘れるなよ」
「はいはい。分かりましたよ」
一日掛かりではあったが、買い物も済ませてようやく宿への帰り道。久遠は俺にすまんなとか言ってきたが、俺は気にしてないと言った。やりたい事もあったが、こうして久遠と二人っきりで一日過ごしたかったと言った。そしてもう一つやりたい事があると言って、手を握った。いきなりの事で驚いていたが、拒否もしないで握ってくれた。
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