暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX 〜水と氷の交響曲〜
ターン35 鉄砲水と菓子屋の陰謀
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って僕の少し後ろを歩いていた夢想の方を見ると、彼女の手には何か包みが一つ握られていた。あれってまさか、いやまさか、ね。あそこまで情けない負け方したってのに、さすがにそれは虫が良さすぎるってもんだ。少しは現実見ようや、僕。

「はい、どうぞ。…………チョコだよ、だってさ」
「え……?」

 ドッキリ。何よりもまずその単語が思い浮かんでどこかにカメラマンが隠れてないか見まわすようになった辺り、僕もこの1年でだいぶ性格が荒んできたんだろうか。結論から言うと、そんなモノ見つからなかったんだけど。
 え、じゃあちょっと待って。これがいわゆるチョコレイト?チョコもどきとかチョコだましとかそういうオチじゃなくて、いわゆる原材料カカオのあのチョコ?あーうん、今すごく混乱してます、僕。本来ならお礼を言うのが当然ってものなのに、それすらも思いつかないし。みっともないなあ、恥ずかしいなあ、僕。

「じゃあ、もう授業始まるから、ね」

 僕が完全にフリーズしているうちに、そう言ってたっと駆け出す夢想。僕は何か声をかけるわけでもなく、 その後ろ姿をじっと見ているだけだった。
 ちなみに、これは後で知ったのだが。わざわざ朝一番に寮まで来て渡してくれたのは実は万丈目のおかげらしい。本当ならもっと後になって渡すつもりだったのを、『だいぶ落ち込んでるみたいだから、もし奴に何か渡すものがあるなら早めに行ってやれ。………いや、奴のためにも今行ってほしい。頼む、この通りだ』とわざわざ頭まで下げたんだそうだ。まったく、万丈目め余計な真似を。
 もっと余談。結局明日香は今年チョコを作らず、必然的に万丈目自身は彼女からチョコをもらえなかったそうな。あと海水に漬けたのがやっぱりまずかったらしく、最後に残ったバラも朝見たらしなびて生ごみに直行したらしい。
 ………ホワイトデーにはどうせクッキー焼くし、少し多めに焼いておいていくつか皆にもあげようかな。
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