ターン35 鉄砲水と菓子屋の陰謀
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レッド寮周辺に見つからないとの理由で上空から花束を投げ落として渡そうとしたらしく、その瞬間に吹いてきた風に吹き飛ばされて鼻は全部海中に消えていったそうな。はっはっは、ここまで踏んだり蹴ったりだともう笑うしかないね。
「それでだ。なんとか海に飛び込んで拾おうとしたんだが、ほとんどが海水でダメになっていてな。なんとか見栄えのいいものがこれしか………」
そう言って差し出す手の中には、真っ赤なバラが1本。うーん、花束が1本の花に、か。随分スケールダウンしたもんだ。
「万丈目グループの不始末は俺の責任も同じ、俺にこの花をプレゼントする資格はない。だから、せめてお前が受け取ってくれ。なに、俺のことなら心配するな。天上院君へのプレゼントは、何かもっとふさわしいものを考えるさ」
そういう万丈目の服は海に飛び込んだという言葉通りまだかすかに湿っていて、どれだけ必死になって拾い集めようとしたのかがよく伝わってきた。それに、そんな震え声だと無理してるのがバレバレだよ、万丈目。
「いいよ、もう。それ、あげるよ。万丈目が頼んだ花なんだし、僕にはもう必要じゃないしね」
「必要じゃない?待て、それはどういう………」
「はい、この話はおしまい。僕はもう今日は寝るから、夕飯はテキトーに作っといてね。お休みー」
なかなか帰ろうとしない万丈目を半ば強引に部屋から押し出し、電気を切ってさっさと布団にもぐりこむ。視界が閉ざされる寸前に見えた景色は、なんだか妙にぼやけていた。まるで、僕の目が水か何かでうるんでいるように。
そのまま眠りに落ちる寸前、壁の向こうから万丈目の声がした。
「清明。…………すまん」
と、ただ一言だけ。だけど、言いたいことは僕にはよく伝わった。
そして今日も朝が来る。バレンタインデー当日である。よっぽど今日は休もうかとも思ったけど、そこまでするのもさすがにどうかと思ったので素直に学校に行くことにする。とはいえギリギリまで布団の中で粘ってたらいつの間にか僕以外の皆はもう出発していたんだけど。ああ、今日はなんだか足が重いなあ。せめて夢想には今日一日は会いたくないなあ。
「清明、おはよう。ってさ」
……と思った矢先にこれだ。世の中の流れってのは、よーっぽどまがった性格とひねくれた根性を元に動いてるらしい。
まあでも、挨拶は大事。人間関係の基本だしね。
「お、おはよう、夢想」
ああ駄目だ、会いたくないっていう気持ちが割とストレートに声に出てる。こんなんじゃあ嫌われても文句は言えないだろう。でも、正直今だけは一人にしておいてほしいです。
「あのさ、清明。これ、もしよかったらね、なんだって」
彼女にしては妙に歯切れの悪いそんな声とともに、何かが動く気配。振り返
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