As 00 「始まりの朝」
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っていいだろう。
だが未だに彼女が何を考えているのか分からないときがある。完璧に分かるわけはないのだが、普通ある程度の親しみがあれば、素でやっているのかわざとやっているのかくらいの区別はつくはず。俺の見抜く力が不足しているのか、シュテルの誤魔化す能力が高いのか……。
などと考えながら、他愛もない会話をしているうちに食事が終わる。俺は学校へ行く準備を始め、シュテルは後片付けを頼んでもいないのに始めてくれた。
学校へ向かおうと靴を履いていると、シュテルがエプロンで手を拭きながら現れた。彼女は毎日欠かすことなく見送ってくれるのだ。言ってはなんだが、本当にレーネさんよりも保護者らしい。
「忘れ物はありませんか?」
「ああ、大丈夫」
「本当ですか? 宿題、ハンカチやティッシュ、お弁当は持ってますか?」
「持ってるよ……あのさ、君は俺の何なの?」
シュテルの過保護発言についそう言ってしまったが、言い終わってから後悔した。どう考えてもボケる機会を与えてしまったからだ。
「いまさら何を言っているのですか。私は――あなたのパートナーですよ」
浮かべられた穏やかな笑みと予想外の言葉に俺は即座に返事を返すことができない。
本当にシュテルは今のように思っているのか。俺がボケてくるだろうと予想したのを予想して、あえて今のような発言をしたのではないか。そんな考えが脳内を駆け巡る。
こちらの内心を見透かしているのか、シュテルは「ふふ」と短い笑い声を上げた。このままだと今日帰ってきてからもおもちゃにされかねないと思った俺は、とにかく返事を返すことにした。
「パートナーって……俺はまだレーネさんから研究を引き継いでないんだけど」
「そうですね。ですがそれは時間の問題でしょう。ショウは学業を怠らずに資格を取るための勉強も進めているのですから。勉強を見ている身として、あなたが資格を近いうちに取れることを保障しますよ」
「……だとしても、パートナーだって言うのは早いだろ。シュテルの気が変わって、別の研究をやるかもしれないんだから」
「照れているのですか?」
「いや、別に照れてないから……行ってきます」
「はい、いってらっしゃい」
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