第拾話
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右胸あたりに、チクリという痛みが走った。
一匹の虫が、先端の鋭いストロー状のクチバシを、ベルベルの肌に突き立てているのである。
ベルベル自身、虫の姿を見ることは出来なかったが、大きさはカナブン程度の甲虫と思われた。
虫は、クチバシを何度も立てるものの、人間の肌を破る力は無いようである。
ベルベルは、恐怖に包まれた現状より、自分の体を這いまわる虫に全ての神経を奪われていた。
虫は、胸からブラウスの中に潜り込み、そのまま腹部まで這って行った。
「きゃ、ちょっと、だ、誰かっ」
ベルベルは、腹に渾身の力を込めた。
虫を振り落とそうと、どうにか少しだけ腹を左右に揺すったものの、全く効果が無い。
それどころか、虫が、へそのすぐ上まで来たのだ。
「ちょ、ちょっと、何や!」
ベルベルは一層力を込めて腹を揺さぶっている。
彼女は、本能的にへそが狙われていることを感じ、何とか防御しようとする。
虫のクチバシの突きは、肌を傷つけることは出来なくても、肌に守られていない箇所に対しては、恐ろしい破壊力があるかもしれない。
それは、肌を刺された時の痛みから容易に想像出来た。
虫のクチバシが、深いへその奥に、抵抗なくスッと突入して行ったのだ。
へその深さは、おそらくは2cmくらいあるだろうか。
クチバシは、粘膜と肉壁が複雑にうず巻く中心部分にグザリと突き刺さった。
「ぎゃっっっっっっ!」
次の瞬間、凄まじい激痛が、腹の奥深くで炸裂した。
同時にベルベルの腹は、へそを中心に爆発を起こしたように飛び跳ねた
クチバシは、そのまま粘膜を突き破って更に奥へ突き進んでいく。
「ぐがああぁぁぁ、や、やめて、お、おへそが!!」
へその周囲がヒクヒクと痙攣する。
粘膜の裏は、腹膜まで胎児時代の退化した尿管等の名残があり、クチバシはその閉塞された管の中を強引に進んでいた。
今までに感じた事のない凄まじい痛みがへその中を駆け巡り、ベルベルは意識が飛びそうに身悶えている。
やがて、クチバシは腹膜まで到達した。
しかし、腹膜は意外に固いため、虫の力ではこれ以上進むことは出来なかった。
すると、虫は、今度はクチバシを引き抜き始めた。
「ふごおおぉぉぉぉっっ!」
ベルベルは、美しい女性とは思えない、意味を為さない奇声を上げる。
へその周辺は紫に変色し、縁が強く痙攣している。
それもその筈で、刺さる時とは違い、引き抜く時はへその奥の粘膜や肉壁を引きずってしまうため、さらに強烈な痛みが発生する。
だが、由貴ベルベルがどんなに苦しんだところで、虫が手加減する筈もない。
へその奥から引き戻されていくクチバシは、退化した尿管や破れた粘膜の残骸を引きずり、たちまち炎症が起こり、膿が発生していた。
そしてクチバシがへそから抜かれる瞬間、中から肉片
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