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Cross Ballade
第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
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 こんくらいのスピードがちょうどいいの。さ、踊りまくるぞ!!」
 律のリードに、世界はきりきり舞いになる。
 世界より小柄な律が(律が154cm、世界が155cm)踊りを引っ張るその姿は、傍から見ても奇妙な光景と言える。
 くるくる回る、スリーステップをそろえる、手を握る……。
「あーもう、すっかりやけになっちゃってますね……。ま、いっか!」
 世界も開き直り、律のペースに意識してあわせ始めた。
 元々ダンス慣れしているのか、走り気味の律のペースにもすぐに追いつく。

 3分ほど2人が踊った後、急に見物者の雰囲気が変わり始めた。
「お、男女カップルがまたか」
「おお・・・しかも桜ケ丘と榊野のカップルかよ!」
「おお!! 待ちに待ったヘテロカップル1号、ついに誕生か!!」
どやどやと皆が騒ぎ立てる中で、そのカップルがキャンプファイヤーの前に姿を現す。
「え……?」
「あ……」
 その2人の顔を見て、律と世界は動きを停止し、これでもかと言わんばかりにドン引きした。


 トイレの中で、両手で顔を隠して、ずっと泣き続ける唯。
 初めての恋、そして、初めての失恋。
 ずっとそれが頭の中を占め、つらく悲しくてならなかった。
 外からカップルの話声も聞こえる。この中は白い光がちょっとともるだけ。
 それが、さらに唯の気持ちを鬱にしていった。
 便器に座って、ずっと泣き続けてから、半刻程過ぎた時。
 目が乾いて痛くなった時、偶然唯の視界に左手のひらが入る。
 薬指には、誠がくれた銀色の指輪が。
 何故だか急に腹が立って、思わず、便器の中に捨てようと、無理に外して腕を振り上げた。
 
 が、しかし……。
 手を放す瞬間、思いとどまった。
 利き腕の指先で、銀色に輝く指輪を見つめながら、唯は呟く。
「これ……。マコちゃんが、一生懸命作ってくれたんだよね……」
 今日の朝、彼の部屋で食事をしたことが、ふいと思い浮かんだ。
『これはシルバークレイをこねて作るんだけど、割と簡単に作れるんだよ』
『ねえ、これ1つもらっていいかな?』
『うん、いいよ』
『やった、ありがとう!』
 自分が喜んだ時、誠もとてもうれしそうだった。
 彼は、自分も好きだったのだろう。
 だから自分に、こんなきれいな指輪を渡してくれた。
「マコちゃん……」
 真っ赤になった目を拭うと、指輪を元の左薬指にはめ、唯は立ち上がった。
 そのまま、トイレを後にする。


 窓が部屋の光を反射し、鏡のようにうっすらと中の景色を映している。
「ただいま」
 唯は皆が座っている、白いテーブル席に戻る。
「おかえり」
 皆、暖かい声をかける。
「唯先輩も」梓はフォークを持ってないほうの手で頬杖をつきながら、「伊藤のことなんか忘れ
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