第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
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してもファンクラブに入れたいと言っていたわね。りっちゃんにも相談するけど、なんとかできないものかしら……」
夜になって、榊野学園の校庭では、キャンプファイヤーが行われていた。
井の字型に組まれたまきの中で、炎が煌々と燃え盛っている。
その前で、カップルが2人ずつ、フォークダンスを踊っている。
律はすっかり疲れ切り、打ちひしがれたとばかりに人ごみの中を歩いていた。
「くぁーーーるぇーーーすぃーーー……」
片っ端からストライクゾーンに入った男達をナンパしたのだが、全然だれも振り向いてくれなかったのであった。
「ちくしょー! こんな美少女になぜ誰も振り向いてくれないんだよぉ……」
愚痴りながら歩いていると、2人さみしく、篝火を見つめている世界と刹那に会った。
「おう、西園寺! 清浦!」
「……田井中さん……」
空元気を振りまく律に対し、世界の声には何やら力がない。
「何だ、まだ伊藤に振られたことを気にしてんのか?」
「……ええ……」
世界の声に、元気はない。
「世界はずっと、伊藤のことが好きだったから。気持ちを少しは分かってあげて」
刹那がフォローしてくる。
「そうかそうか、じゃあ非リア充なのはあたしと同じだな。
あたしも全然彼氏ができねえよお……。本当はHTTファンクラブ第1号は彼氏にする予定だったのにぃ……」
「そうだったんですか」世界はきょとんとしつつ、「私が第1号じゃだめですかね」
「ま、まあそういうわけじゃねえけど……」
「まあ、田井中さんに彼氏ができたら、第1号の座をその人に譲るつもりでいますよ」
「はは……心遣いわりいな……」
ふと律は、世界が誠にかけた最後の言葉「私、誠を好きになったこと、後悔してないからね!」を思い出した。
「それにしても、あんなこと言うなんて……。伊藤も唯もわけがわからなかったみてえだけど」
「分からなくていいんです。ただこの先、どこかで思い出してくれたらいいな、と思って」
「……」律はちょっと考えてから、「あー! こうなったら踊ってうさを晴らすぞ!! ほら、西園寺、行くぞ!!」
「え、ちょっと田井中さん!!」
世界の腕をひっつかみ、律は堂々とキャンプファイヤーの前に出てくる。
当然、皆の視線が2人に集中する。
「あれー? 一応榊野と桜ケ丘のペアだよね」
「でも女同士じゃないか」
「いいんじゃない? この際何でもありで」
皆皆が噂する中、世界は顔を赤らめて体を丸める。
律はやけになり、
「うっせーやい! 同情するなら彼氏くれ!!」
「田井中さん……。昔のドラマじゃないんだから……」
突っ込む世界に対し、律は自分から世界の手をつかんでリードを始めた。
「ちょ、ちょっと田井中さん! 速すぎますよ」
「いーんだよ!
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