第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
[5/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
度と同じことを繰り返さないように」
「おいおい、昔の宦官じゃないんだからさ……」
「被害を受けた人たちのなかには、さわ子先生以外に、桜ケ丘の生徒たちもいるみたいですけど……」
「何ですって!?」
「そういえば、曽我部先輩からその話を聞いたな……」
驚く梓に対し、澪は背筋に寒気を感じながら答えた。
ムギも、雰囲気をぶち壊したとわかり、
「ま、まあ、とりあえず、精神的なバックアップはするつもりよ。ただ、止にやられても、みんなそれを苦に思ってないみたいなのよね……」
「は? なぜ!?」
「相当な床上手か……」
澪は呟く。
「それから、伊藤さんのために、マスコミにはチップを渡しておいたの。
必要以上に話を広めることのないように」
「至れり尽くせりだな……。むしろそのほうがありがたいけれど。
伊藤もこれ以上、お父さんのことで苦労したくあるまい」
呟く澪に、ムギは、
「伊藤さんのこれからの生活に支障があったらまずいから。沢越止に預けられている妹さんもいるそうで、伊藤さんのお母さん、引き取るという話だし……」
「いたるちゃんか。そうだな。いたるちゃんのためにも、事は小さく収めておいた方がいいな」澪はチョコレートケーキを口に入れながら、「そういえば、ファンクラブに入った人は意外と少なかったな。律の奴は、これから定期的に一緒にお茶会を開くとか言っていたけど」
「甘露寺さんは、りっちゃんが除名するかどうか考えるそうよ。
……それにしても、恋なんて、しないほうがよかったのかな……。
誰も好きにならなければ、裏切られた時にこんな悲しい思いってしないし……」
ムギの表情が、どんより暗くなる。
「い、嫌、大丈夫だって。私ももう気にしてないし」
「そうですよムギ先輩。今回は相手が悪かっただけですよ」
澪と梓がフォローをするが、ムギはうつむいて落ち込んでしまった。
「……私、誰とも恋しない……」
そう呟いて、黙々とケーキを食べていく。
こりゃ、ちょっとひどい人間不信だな。
尊敬していた人に裏切られ、あれだけ持っていた思いを、粉々に粉砕されたんだからしょうがないか。
澪と梓は、顔を合わせてため息をついた。
雰囲気が暗くなったと悟ったのか、ムギも話題を変えて、
「そう言えばさわ子先生、沢越止に襲われたって話だったけど、伊藤さんにも話した通り、さっき電話をした限りでは、元気そうだったのよ」
「さっきも聞いたけど、本当なのかな……」
「それで、榊野1年3組の澤永泰介っていう人をファンクラブに入れるように、先ほど電話があったの」
「澤永……?」澪はふいと思い出し、「言葉を襲った奴か? そんな奴入れて大丈夫なのか?」
「そうなんですか?」
「まあ、とりあえず私が撃退したけど……」
「さわ子先生は、何と
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ