第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
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があるそうだよ」
梓は、気になったことを打ち明けてみることにした。
「そういえば、桜ケ丘と榊野のヘテロカップル1号って誰になったの? 唯先輩と伊藤がああなったことを考えると、該当者なし?」
「……今にわかるわよ」
話題を変えた梓に対して、隣でずっと机に突っ伏していた光が、低―い声で言った。
それを聞いて、律と世界も、顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
「な、なんかやな予感……」
呟く梓。
その時、急にドアがバタンと開いて、
「みんなー! こんちゃー!! 私、榊野学祭で彼氏作ったから、紹介するねー!!」
ハイテンションな声で、顧問の山中さわ子が音楽室に飛び入り、
「やっほー!! さわちゃんの彼氏の澤永泰介でーす!!」
榊野学生服のまま、澤永泰介が後からスキップで部屋に入ってきた。
「この子とはウマが合うのよ!! 102番目の新しい彼氏、できたー!!」
「意気投合、したーっ!!」
肩を組みながら、さわ子と泰介はガッツポーズを上げる。
ポカンとするムギ。飄々としている刹那。
後の皆は口をあんぐりと開けて、2人を見つめる。
梓はこの世の終わりとばかりに、手にしているショートケーキをぽとりと落とし、光は無言で、幽霊のようにふらりふらりと部室を出て行く。
「ヘテロカップル1号の景品も、もらったーっ!! パルコの高級チョコ、おいしいよねーっ!!」
「まあねー!! ……ところでそう言えば、秋山さんいない……? どうも苦手なんだよなあ、あの人……」
「ん? 泰ちゃん、どうしたのよ。」
「俺、ちょっと秋山さんが苦手でさ……」
「そうなの。ま、少し遅れるそうだし、すぐ慣れるわよ。あの子も奥手だし。
あ、そうだ、泰ちゃんのために特別な服を作ったから、着てみてよ。」
「えー! さわちゃん、どんなどんな!?」
エルビス・プレスリー風純白のフリルを取り出して、泰介に着せながら、さわ子は、
「唯ちゃん、残念だったみたいね……。伊藤君は私と話がしたいと言っていたけど、ちょっと考えなおしてもらうことってできないかしら」
「いやいや、それは要らぬ節介だろう。桂さんを恋人にするというあいつの決意はもう固いみたいだし。まああいつによれば、平沢さんとは友達以上恋人未満みたいな関係になってるとさ。いいんじゃねえの?」
「そう……」ミック・ジャガー風の黒いジャケットとGパンも出しながら、「そう言えば、もう1組のヘテロカップル候補はどうなったの? 確か足利君と、あとは……」
「ああ、加藤さんと真鍋さんか。何でも、真鍋さんは遠縁先で亀仙流を身につけ、加藤さんは海でうっかりゴムゴムの実を食べ、その能力を駆使して足利争奪戦に臨んだらしい……」
「亀仙流とゴムゴムの実って本当にあったの……というか、その力で争ったら、半径30キロは
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