第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
[13/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
。
とはいっても、あの甘露寺じゃねえよ。ムギが思い描いた『理想の』甘露寺にさ。
学祭前は、本当にいい人だと思っていたんだろう? そしてバスケが得意なさわやかガールだとさ」
「りっちゃん……」
ようやくムギが、小さく笑みを浮かべた。
「ムギ先輩、いっそ財力でひねりつぶすというのはどうですかね」
梓が何気にトンデモなことを言ってくる。
「いや、そんな乱暴な……。とはいっても、ちょっと痛い目にあってほしいというのが私の正直な気持ちかな」
澪は、たしなめているのか賛成しているのかよくわからない。
「……まあ、私が直々に話すぜ。」
律がまとめ上げる。
「ねえ……」急に梓が、「大人になるって、どういうことですかね。」
「は……?」
「榊野生徒達、童貞卒業のなんのってうるさかったから。
でも結局、唯先輩を見て思うんですね。
大人になるっていうのは、恋愛をかなえることでも童貞卒業することでもなくて……。
新しい場所に行って、いろんな人に触れ合って、もまれて、
それを積み重ねることで、大人になっていくと思うんです……。
今回の榊野学祭のように……。
私はまだ、やっぱり愚痴ったり文句言ったりで子供っぽいかなあ、と思うけど」
「……」
「いきなり何を言ってんだよ」
「いや、唯先輩も、その点で大人びたかなと思って……。何より、童貞卒業のなんの言ってる榊野生徒がばからしく思ってさ」
「梓、それをあいつらの前で言っちゃだめだぞ。一種の文化なんだから」澪は彼女をたしなめてから、「じゃ、練習しますか」
「ま、色々あったけど、今回は今回でいい思い出になったのかもな。
マブダチも新しく出来たし、人助けもしたしよ」
「そうだな」
律が朗らかな口調で話すと、澪がうなずく。
律は一方で、携帯でメールを入力していた。
七海宛に。
薄暗い部屋の中で、黒板の前にスクリーンが垂れ下がる。それを見て、皆皆がどよどよと騒いでいる。
ここは榊野学園の視聴覚室だ。
そこで、女バスの打ち上げが行われている。
部員たちに混じって、世界がちらちらと教卓のほうにあるスクリーンを見つめる。
その隣で、七海は携帯のメールを読んでいる。
「どうしたの、七海?」
「田井中さんからメールが来てる。……なぜムギさんを脅して、自分のところに組み入れようとしたのか、なぜ秋山さんに手を出そうとしたのか、腹を割って話がしたいって」
世界は、重い口調で、
「私が間に入ろうか? 田井中さんと私は話が合うし、私が話せば、あの人も分かってくれるかもしれない」
「いや……まあ私の独断でやったことだから、談判ならタイでするつもりだよ。
それより世界、大丈夫なのか? 伊藤に振られてから、昼飯も全然のどを通らないみたいだが」
「だ、大丈
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ