第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
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ゃんのお父さんっぽいし」
「じゃあ言葉が、お母さんということになるのかな。」
「えへへ……」言葉はぽっと頬を染めて、「いつか、そうなれたらいいな、と思ってます。
この指輪は、一足早いけど結婚指輪だと思っていますよ」
「言葉……。ちょっと気が早いぞ」
誠も、言葉の笑顔に頬を赤くする。
彼は桜ケ丘の方向を見据えて、呟いた。
「唯ちゃん……。また、俺に笑いかけてくれるかな……」
それからのことである。
今度は榊野学祭の後に行われる桜ケ丘の学祭に向けて、練習を続ける放課後ティータイム。
だが、演奏するとちぐはぐになる。
唯のギターに強い思いがこもっている一方、ムギのキーボードには力がない。
「あー、だめだだめだ!!」梓が再び不満を言う。「これじゃあ演奏にならないよ!!」
「落ち着け梓」澪がフォローをする。「まだ時間はある。ゆっくり着実に練習をすればいいと思うんだ。……それにしても唯、お前は張り切っているよな」
「うん……」唯はどこか、さびしげな表情で、「きっと今度の学祭、マコちゃんも来るだろうから……。恥ずかしくない演奏をしたいんだ。」
「唯……」
「もう彼女になれないって、分かってはいるけれど。
それならばせめて、マコちゃんに思いっきりいい演奏を聞かせたいと思ってるんだよ」
そう言って、笑顔を見せる唯だが、その中の悲しさが、皆にはひしひしと感じられていた。
「唯先輩……」梓は唯の瞳を、じっと見つめながら、「これは私の気のせいかもしれませんけど……少し大人びたように見えますよ」
ふと、コンプレックスを乗り越えられたような気がして、唯の気持ちが急に浮いた。
「ほんとに?」
思わずニカっと笑顔を浮かべる。
ギュッ
梓に抱きつき、
「ありがとう! 私、少し大人っぽくなりたかったんだー!!」
「ああもう、くっつかないでくださいよ! やっぱり大人げないや唯先輩は……」
梓は呆れる。
「私も同じ気持ちだよ、唯」澪もまた、唯と同じ悲しげな笑顔で、「伊藤や言葉に、いい演奏を聞かせたいさ」
「だよね、澪ちゃん……」
「まっ、これはこれで1つの決着じゃねえの? ……ところでムギも、ちょっと音楽に力がねえな。」律がムギに話を振る。「やっぱり、甘露寺のことがどうしても残っているのか」
「ええ……。挙句澪ちゃんに、痛い思いをさせちゃって……」
「いや、私はもう気にしてないって。」
澪があわてて言うが、ムギは、キーボードを視界に入れてうなだれてしまう。
「ムギちゃん……」
皆戸惑っていると、律がムギの両肩をぽんとつかみ、
「おいおい、ムギ。甘露寺に裏切られたのがそんなにつらいなら、それを反面教師にして親切になればいいじゃねえかよ。そして甘露寺を追い越してふっきっちまえばいいだろうが
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