第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
[2/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
こんなことは、求めてほしくなかった」
唯はハッと我に返った。
自分が何より求めていたことなんだけど、誠自身は求めていなかった。
それは……。
「その純粋さや笑顔に、何より癒されたから。
純粋さは、ずっと保っててほしかったんだ」
「じゃあ、求める私は嫌いってこと……」
「好きではないことは、確かだな……」誠は入口を見ながら、「それに……そんなことをしたって、唯ちゃんが言葉に勝てるわけじゃない。
どんなことをしても、言葉への思いは変わらないんだ。
さんざ言葉のこと、裏切ってしまったから……これ以上裏切ることは、できない。
「マコちゃん……」
「こんな俺を好きになってくれて……俺を好きになって嬉しいって言ってくれて……ありがとう、唯ちゃん……。
そして、ごめん……」
言いきってしまってから、誠は思わずぎょっとなった。
唯の目には、涙がいっぱいたまっていた。
「そんなぁ……。やだよぉ……。つらいよぉ……」
そのままベッドに、唯は泣き崩れてしまった。
胸の痛みが、さらにひどくなった。
それでも……。
それでも、耐えるしかない。
その時、
「唯! 伊藤!!」
澪が言葉・梓を連れてやって来たのであった。
すっかり、窓の外は赤くなっている。
唯を抱きしめたまま、澪は休憩室を後にして、廊下に出る。
後から、誠と言葉がゆっくりと出てきた。
誠の表情は浮かないが、言葉には多少憐憫を含めながらも、喜びの顔がある。
待っていたかのようにムギもやってくる。
「決着……ついたのね。」
「ああ。」
泣きじゃくる唯と、上手く言えない誠にかわり、澪が結末を説明する。
「そうでしたか……」
「ちくしょー! 全然彼氏なんて出来やしねえ……んお?」
偶然ゆえか、律も通りかかった。目の前に澪の胸のあたりですすり泣く唯を見て、少々動じてしまい、
「おい、何かあったのか?」
「ああ、澪ちゃんの話によれば、」ムギが代わりに答える。「唯ちゃん、伊藤さんに振られてしまって……。伊藤さん、こちらの桂さんと付き合いなおすそうよ。」
すると律の表情は、すぐに冷めたものになり、
「あーはいはい。末永―く爆発しちゃってくださ……あいたたた!!」
ぼやき口調の律を、澪は思いっきりつねった。
「はは、すまないね。律はなかなか彼氏が作れなくて、ジェラシー入ってるんだわ」
弁解する澪に対し、ふと言葉が、
「秋山さん……今回の件では本当にお世話になりました。ありがとうございます。
それと、私のこと『桂』ではなく、『言葉』でいいですよ」
「そうか……わかった。私も『澪』でいいぜ」
こんな会話をする。
横で誠はそれを見て、少し微笑む。
彼女にもようやく、友達ができたらしい。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ