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Cross Ballade
第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
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こんなことは、求めてほしくなかった」

 唯はハッと我に返った。
 自分が何より求めていたことなんだけど、誠自身は求めていなかった。
 それは……。
「その純粋さや笑顔に、何より癒されたから。
純粋さは、ずっと保っててほしかったんだ」
「じゃあ、求める私は嫌いってこと……」
「好きではないことは、確かだな……」誠は入口を見ながら、「それに……そんなことをしたって、唯ちゃんが言葉に勝てるわけじゃない。
どんなことをしても、言葉への思いは変わらないんだ。
さんざ言葉のこと、裏切ってしまったから……これ以上裏切ることは、できない。
「マコちゃん……」
「こんな俺を好きになってくれて……俺を好きになって嬉しいって言ってくれて……ありがとう、唯ちゃん……。
そして、ごめん……」
 言いきってしまってから、誠は思わずぎょっとなった。
 唯の目には、涙がいっぱいたまっていた。
「そんなぁ……。やだよぉ……。つらいよぉ……」
 そのままベッドに、唯は泣き崩れてしまった。
 胸の痛みが、さらにひどくなった。
 それでも……。
 それでも、耐えるしかない。
 その時、
「唯! 伊藤!!」
 澪が言葉・梓を連れてやって来たのであった。


 すっかり、窓の外は赤くなっている。
 唯を抱きしめたまま、澪は休憩室を後にして、廊下に出る。
 後から、誠と言葉がゆっくりと出てきた。
 誠の表情は浮かないが、言葉には多少憐憫を含めながらも、喜びの顔がある。

 待っていたかのようにムギもやってくる。
「決着……ついたのね。」
「ああ。」
 泣きじゃくる唯と、上手く言えない誠にかわり、澪が結末を説明する。
「そうでしたか……」
「ちくしょー! 全然彼氏なんて出来やしねえ……んお?」
 偶然ゆえか、律も通りかかった。目の前に澪の胸のあたりですすり泣く唯を見て、少々動じてしまい、
「おい、何かあったのか?」
「ああ、澪ちゃんの話によれば、」ムギが代わりに答える。「唯ちゃん、伊藤さんに振られてしまって……。伊藤さん、こちらの桂さんと付き合いなおすそうよ。」
 すると律の表情は、すぐに冷めたものになり、
「あーはいはい。末永―く爆発しちゃってくださ……あいたたた!!」
 ぼやき口調の律を、澪は思いっきりつねった。
「はは、すまないね。律はなかなか彼氏が作れなくて、ジェラシー入ってるんだわ」
 弁解する澪に対し、ふと言葉が、
「秋山さん……今回の件では本当にお世話になりました。ありがとうございます。
それと、私のこと『桂』ではなく、『言葉』でいいですよ」
「そうか……わかった。私も『澪』でいいぜ」
 こんな会話をする。

 横で誠はそれを見て、少し微笑む。
 彼女にもようやく、友達ができたらしい。

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