第十一章 追憶の二重奏
第三話 決心と決意
[8/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
人間離れした美貌。本人は気にしてたが、小さく華奢な身体には、触れれば溶けて消えてしまうかのような儚い魅力があったな」
「小さい、ですか?」
士郎からお返しで注がれたワインで喉を湿らしたカトレアが、小さく首を横に傾げた。姉だと言うのならば、士郎よりも年上の筈である。その姉に対し士郎は小さいと言った。確かに士郎は平均よりも高い身長であるため、大概の女性を低く感じるだろう。しかし、カトレアの耳にはそう言う風には聞こえなかった。カトレアの訝しげな視線に気付いた士郎は、グラスの中のワインを揺らす。
「あ〜……そうだな。ルイズよりも頭一つ分ほど小さいな」
「……その人は本当にお姉さんなのですか?」
カトレアに苦笑を向けた士郎は、グラスの中のワインを一気に飲み干した。
アルコールが混じった吐息を吐き出しながら、空になったワイングラスの縁を額に当てる。微かに酒が回り、熱を持った身体をグラスが僅かに冷やす。
目を閉じ、士郎は呟く。
「勿論だ……イリヤは俺の姉だ。それはまあ、姉の特権だと言って色々と無茶な要求や行為を強要するところもあったが……ふと気付いた時いつも一番傍にいたのはイリヤだったな」
「……良いお姉さんだったんですね」
士郎が口元に形作った笑みを見たが、ワイングラス越しに見える歪んだ顔に浮かんだ懐かしさの奥に宿る悲しみに気付くと、カトレアはそっと静かに顔を伏せた。
「……俺には勿体無いくらいの姉だったよ」
「……お姉さんは」
話しの流れからして、士郎の姉が今どうなっているのか何とはなしに察しながらも、カトレアは聞く。
「数年前にな……突然だ。俺がそれを聞いた時には、もう何もかも終わった後で……死に目にも会えなかった」
「病気だったのですか?」
「いや、生まれつきのもので……寿命……みたいなものだと言われた」
「……寿命、ですか」
カトレアは自身の胸を軽く抱く。腕の中、服の奥には士郎から渡された守刀があった。硬い感触を心強く感じながら、カトレアは士郎を仰ぎ見る。
「会ってみたかったですね」
「ふむ、カトレアとイリヤか……もしかしたら意外と話が合うかもしれないな」
「そう何ですか?」
「あ〜そうだな。カトレアみたいなタイプはあまりいなかったから判断材料が少なくてハッキリとは言えないが」
「あら? 私みたいな人でないのならたくさんいたんですか?」
「―――っ」
頬に手を添え小首を傾げたカトレアの顔に浮かぶ邪気のない笑顔に、士郎は何故か唐突な焦りに身を震わせた。
「あ、その、いや、別にそういうわけでは……」
「私みたいな人がいないということは……やっぱりシロウさんは小さい子が好みなんですね」
「いやいやなんでさっ!? なんでそんなことになるんだっ!?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ