SAO編
序章 はじまりの街にて
2.変わる世界
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向だけではなく微かに別方向にも曲がる所や、関節を捻転出来る可動領域まで、細部に至るまで再現されている。
自分の体をあちこち触ると、筋肉の弾力に骨の感触まで判る。
動けば息が上がり、腹も減る。匂いと湿気を感じる風や、石畳の段差や土の微かなデコボコを踏んだときの足の裏の感覚。
皆が仮想、仮想と言っていたが、俺にはこれが本当に仮想だとは思えなかった。
――俺には、ここが《現実》に見えてしょうがなかった。
広場のベンチへ座り、食後に風を感じていた俺は、時間を確認する為に再び《システムメニューウィンドウ》を開いた。
――?
開いたシステムメニューに一瞬、違和感を感じた。
しかし、未だシステムメニューの全てを確認したわけでもない俺が、その違和感に気付くことは無かった。
俺は、一旦違和感を置いておいて、時刻を見る。
時刻は、午後四時。
SAO公式サービス開始は午後一時から。
そして、俺がログインしたのが、約一時十五分。
もうすぐ三時間が経つ。予想通りならば、もうそろそろ二木は帰って来る頃合だろう。
俺はこのまま中央広場にあるベンチに座りながら、二木がログインしてくるまで待とうと思った。
周りを見れば、俺と同じ格好 (装備) をしたプレイヤーと思われる人がどこかへ向かって走っていたり、二人で歩いていたり、もっと大勢で固まって話していたりしていた。
ふと目を瞑ると、さっきから音楽が流れていたことに改めて気付く。
目を開けてその音源を捜すと、広場の片隅で楽団らしき人達が色々な楽器を演奏していた。
俺は、その音楽に耳を傾けながら、もうすぐ来るであろう友を待った。
そうして、一時間半が経っただろうか。
もうすでにログインしていてもおかしくはないと思うのだが、一向に二木が来る様子が無い。
何かあったのだろうかと、俺は一旦ログアウトをして確認しにいこうとした。
――だが次の瞬間、この世界の全ては変わることになる。
いや、逆に先ほど俺が思っていたことの通りになった、と言えるのかもしれない。
リンゴーン リンゴーン
「――!?」
頭を揺さぶるかのような大音量の鐘の音が、周囲に轟いた。
直後、俺の周囲、中央広場のあちこちで青い光が点滅した。そして、青光が現れ消えた場所には人が立っていた。
数人ではきかない。広いと思っていたこの中央広場からはみ出すぐらいの人が、青い光と共に現れた。
直後、そこかしこで叫び声が上がった。
「おいGM! 今のはなんなんだよ!?」
「ねぇ、ログアウトが出来ないのよ! 早く何とかしてよ!」
「もうちょっとでやっとモンスター倒せたんだぞ!? なんとか言えよGM
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