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SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
序章  はじまりの街にて
1.運命の日
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 二〇二二年、十一月六日、日曜日の午後五時半頃。

 その《運命の日》に、俺はその場所に立っていた。
 叫ぶでもなく、泣くでもなく、唖然とするでもなく、ただ冷静にその《声》を聴いていた。

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 俺の遥か上空に、真紅のフード付きローブを纏った、顔の無い巨大な人影らしきものが見える。
 まるで透明な巨人が――いや、闇で出来た巨人がローブを纏っているような、そんな外見。
《声》は、上空から響いてくるように聴こえた。ともすれば、その巨人が発しているように聴こえる。

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

《茅場晶彦》と名乗ったその声。
 その名前には聞き覚えがある。学校の友人がその人間の素晴らしさを延々と語っていたのは、まだ記憶に新しい。
 確か、VRMMO (仮想大規模オンラインゲーム) を現実のものとした《ナーヴギア》の基礎設計者であり、今俺がログインしている《SAO(ソードアート・オンライン)》の開発ディレクター兼ゲームデザイナーにして、物理量子学者でもあるのだと聞いた。

 所謂(いわゆる)、本物の天才というやつなのだそうだ。
 この《SAO》を作った側という意味なら、先ほどの『私の世界』という発言にも納得できる。
 だが、彼の言う『唯一』という言葉が引っかかる。彼が言っているのは、自分は、自分だけがこの世界の管理できる《神》であると言っているように聞こえる。

 だが俺の眼には、上空に映し出された顔の無い巨人からは、《神》というより《死神》といった印象を受けた。
 そして、その印象はある意味正しかった。

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合では無い。繰り返す。これは不具合ではなく《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』

 ログアウトボタンの消失。それは三十分ほど前から周りで騒がれていた件だ。
 それが無ければ、プレイヤーは自分の意思では、この仮想世界から現実の肉体に戻ることは出来ないという。
 他に戻る手段といえば、現実世界の誰かにナーヴギアを外して貰う、もしくは電源を切って停止させて貰うくらいだと友人は言っていた。
 しかし――

『……また、外部の人間による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合――』

 冷静な、いや事務的な声が、無情にもそれを告げた。

『――ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 つまり、死ぬ。
 そう、茅場晶彦は言ったのだ。
 機械に詳しくない俺には、それが本当のことなのか、本当にありえるこ
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