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知と知の死闘
第一章
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に大きい。とある球団が大砲をどれだけ集めようとそれがなかなか勝利に結び付かず優勝を逃し同じ間違いを飽きもせず繰り返しているのはこの守備をおろそかにしている事が第一の要因である。
 それだからこそ彼はこれからの勝負がヤクルトにとって容易でないとわかっていた。彼は内心苦悩していた。
 第二戦、西武の先発は郭泰源、ヤクルトは荒木大輔であった。
 オリエンタル超速球と言われその速球と高速スライダーを武器にした男。このシーズンも抜群の安定感で十四勝、防御率は二・四一と投手陣の大黒柱であった。
 対する荒木はかって甲子園を湧かせた男。しかし度重なる怪我に苦しみ続けた。
 だがこの年の後半奇蹟の復活を遂げマウンドに戻って来た。後の無い崖っぷちの試合で常に投げ、ことごとく勝ってきた。しかし郭を前にしてヤクルト打線はあまりにひ弱だった。
 この日の郭は絶好調だった。飛ばす。打てない。ヤクルトは一回に飯田が内野安打を打っただけだった。怖ろしいまでのピッチングだった。
 森の理論の特徴としてシリーズの第二戦を最重要視するという点がある。その時に送り込んだ投手こそ郭だったのだ。
 野村もシーズン前に言った。
「第二、三、五、七戦が山場や」
 と。その通りであった。郭はその重要な試合でヤクルト打線を完全に抑えていた。
 二塁すら踏ませない。抜群のコントロールであった。野村はチャートを見て舌を巻いた。
「真中のボールは一球もあらへん。隅っこばっかりや」
 これ程の投手を打てるのはそうざらにはいなかった。
 しかし対する荒木も粘る。彼にもプライドが、そして意地があった。
 だがその意地も打ち砕かれた。六回、西武の主砲清原にツーランホームランを浴びてしまった。
 これで森は勝利を確信したのだろう。六回裏にレフトを守っていた大砲の一人デストラーデを引っ込め代わりに俊足の笘篠誠治を入れた。野村はこれを見て忌々しげに呟いた。 
「六回の攻撃が終わって守備固めに入る野球なんてわしゃあ初めて見たわ。二点あったらおつりがくるっちゅうんかい」
 だがその通りだった。郭はその回も無失点に抑える。最早精密機械の様なピッチングだった。
 しかし運命の女神とは実に気紛れなものである。これはどの世界においても変わりはない。この世の真理の一つでもある。
 七回に事件は起こった。打席にはヤクルトの主砲ジャック=ハウエルがいた。
 ハウエルの打球は郭を襲った。それは彼の右親指を直撃した。
 郭は右投手である。これは危機を意味する。止む終えなく彼は退場することとなった。
 代わりにマウンドに上がったのはもう一人のストッパー潮崎哲也であった。彼は監督の期待に応えヤクルト打線をよせつけない。結局試合は清原のホームランを守りきり西武が勝利を収めた。西武ファンもマスコミも思った。やは
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