第一章 〜囚われの少女〜
幕開け
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」
「ドラキュラ伯爵の仮装かな?」
「悪魔ってあんな感じなのかな」
こそこそと口々に言い合う。
そんな子供たちを男は、鋭い眼光で見下し舌打ちをした。
「面倒なクソガキどもが。黙ってろ」
憎悪に満ちた声で冷血な男は威圧する。
「お、お、お芝居みに行こうぜ」
「ああ、そうだな!」
男に悟られないよう子供たちは焦る気持ちを抑え、そこから逃げ出した。
睨んだ者を瞬時に石に変えてしまうような、悪魔の瞳の男はひとり呟く。
「そろそろ観劇の時間か」
太陽は空に高く上ろうとしていた。
――
幕が開がる寸前のナレーション。
「歯車と歯車が噛み合うように人々は出会い、物語は動き始める。一体この物語の、悲劇の始まりはいつなのだろう。気が付いた時は既に遅く、知らないうちに歯車は狂いだす――それに気付くことが出来たのならば、この惨劇は回避できたのかもしれない」
昔話の語り部のようなモノローグ。
観客席から歓声が沸きあがる。
劇『エリオとジュリエッタ』の幕は上がった。
ジャックの姿は舞台裏にも、どこにもなかった。
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