第一章 〜囚われの少女〜
逃げた小鳥
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背後から団長の声。
「でも、そんなところが好きよ♪」
団長はシドに抱き付く。
「…………」
シドは何とも微妙な心持だった。
その様子を少し遠くから見守るミカエラ。
「まぁ、二人とも。朝っぱらからおアツいこと」
お節介焼きのミカエラは、ふとジャックの事が気がかりになる。
ジャックを起こしに部屋に行くことにした。
ジャックがいつもは誰よりも早く起きるということを、皆が忘れているような妙な朝だった。
―
「――なんだって!?」
下船の準備をしていた団長とシドは耳を疑う。
「ジャック……どこにも、いないの!」
ジャックの失踪にいち早く気が付いたのはミカエラだった。相当慌てて、あちこち走り回ったのか、息を切らしていた。
「すました顔して自分勝手なガキだぜ! この俺が準備しているっていうのによお」
シドは露骨に不快な表情だ。
「まだその辺にいるんじゃないか? ……しっかし、いくらなんでも逃げるとはなあ。見損なったぜ!」
「きっと何か考えてるのよ。ジャックなりに」
ミカエラはシドをたしなめるが、自身もジャックに対する動揺を隠しきれない。
「今までこんな事一度もなかったわ、ジャックは仕事に対しても……逃げるなんて事、今まで……」
「大丈夫。ジャックはきっと戻ってくるわよ。帰る場所はここなんだから」
やはり団長は、そんな中でも落ち着いた表情をしている。
しかし先ほどの言葉とは変わって、少し寂しそうにこぼした。
「でも、そんなに今回の作戦、気に食わなかったかしら……?」
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