第一章 〜囚われの少女〜
ジャックの苦悩
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んなことを言えるのは唯一ジャックだけだろう。
団長ライラは生物学上男ではあるが、普段は女言葉を使う。しかし、それには品があり、その人の味となっていた。
しかも抜群の統率力で団員をまとめている事から、その人格や人柄は、尊敬はしても軽蔑するような者は決していない。
一方、団長の方は表情一つ変えずに――
「それじゃあ好きにしてもらうよ、ジャック。アンタは盗賊失格よ」
団長は決して、滅多な事ではそういった言葉を発しない。
その言葉は、団からの追放を意味するからだ。
周りの者は息を飲んで見守る。
「……やんのかやんないのか、港に着くまでに外で頭冷やして来な!」
そして厳しく、団長はジャックに言い放った。
受け取り方によっては考えるチャンスを与える言葉だ。だがジャックは、納得いかないといった顔をしたまま、部屋を後にした。
「さて……。と、なると代案を考えないと行けないわね。演目は、変更ね」
盗賊団の会議は夜更けまで終わらない。
「くそっ……なんで僕が。なんで……僕なんだ」
盗賊団を辞めるか、辞めないか。
(……でも)
自分はどうしても女性に触ることができない。
(どうすれば。一体どうすればいいんだ……)
ジャックは独り、夜風に当たりながら己の運命を苦悩していた。
港へ着くまでには決心できそうにない。いや、ジャックの心が揺らぐには、何が起きようと到底不可能だ。
姫を抱きかかえようとした瞬間に無様な姿に成り果て、大悪人として首を刎ねられること以外想像できなかった。
その想像はとても恐ろしいものだったのだろう。ジャックは具合が悪くなってくる。
「……な……んだ?」
――…………っ!
突如として、頭が割れるような痛みに襲われた。それはいつもの症状よりも激しく、本当に頭が割れて、死んでしまうのではないかと思う程だった。
そこからの出来事をジャックは――自らの知る術を失った。
――お母さん! お母さん! ここはどこなの? どこに行っちゃったの? 僕のことを置いて行っちゃったの?
失われた意識の中で、幼き日の少年の声がする。
――僕はどうしたらいいの? お母さん。ねぇ、お母さん? どこ? どこにいるの?
(僕は……どうしたらいい? また、ひとりになってどうするんだ?)
ジャックは夢の中で、自らの人生をかえりみる。
幼い頃。母親に捨てられて以来、女が嫌いになった。
自分が女だと思う人物には、触れることも触れられることも恐ろしい。感覚でだが、半径1m以内に女の気配を感じただけで、とてつもない寒気に襲われる。
その度に心は氷のように鋭くなり、その対象に対して嫌悪感を抱く。触れたり触れられたりすると、頭痛や吐き気、体中に起こるかゆみなどの症状に苦しむことになる。
なに
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