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第一章 〜囚われの少女〜
潔癖症の少年と演劇団
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るような服を着たり、普段はできないからと道化や盗賊、はたまた浮浪者などの恰好を好んでしたりする。

 そして先ほど問いかけた青年は、計画を自分なりに要約する。
「要するに。まずは、演劇でみんなのハートを奪っちまう。そんで、パーティでかわいこちゃんをゲット……じゃなくて、そのあとに金品や姫君をかっさらおうってことだな!」
 この、頭にはちまきを巻いた青年――シドは、団員の中の誰よりも浮かれたような顔でガッツポーズを決めた。

 しかしながら、こういったパーティ、お祭り好きなのはこの盗賊団の皆も例外ではないようだっだ。
 それから余談だが、噂によると。そこではお見合いのような――異性探し、要するにナンパ行為が密かに行われているらしい。
 普段はやり辛い、という人も、素顔が見えないというその開放感を利用するのだった。それは若者たちの間では、一般的な楽しみ方のひとつとなっているようだ。

「まぁ、その、アンタたちの本領を存分に発揮できるってわけね」
 予想以上に沸いた空気にやや呆れてはいるが、言っている団長本人は至って真面目だった。その言葉にはさまざまな意味が込められている。

 女嫌いのジャックは、その中でも全く表情を変えずに話が終わるのを待っていた。
(どうでもいいけど、早く終ってくれ……)

「とにかく、アタシたちは盗賊団『マスカレード』だ。其処のところは得意分野ってわけね」
 その言葉の理由は、団員のそれぞれが、個々に仮面(マスク)を持っているからだ。仕事の時、その仮面をつける事がトレードマークとなっている。それが団の名前の所以(ゆえん)でもある。

「音楽担当、舞台・俳優、姫の誘拐役、余裕があれば金品・財宝を狙う係。大体いつもと同じだから、ここの説明はいいわね」
 いつも大体、観客やターゲットを惹き付ける役、仕事をこなす役と大まかには決まっているのだ。

「ただ」
 団長は今までより一層深刻な、だが挑戦するといった表情をする。
「今回は俳優、姫の誘拐をどちらもしてもらわなくちゃいけない団員がいる」

 静まる団員たち。一番の大仕事は、誰に任されるのか予想したのだろう。

「それはアンタよ」
 意外な人物の名に、団員たちの目は一瞬にして一点に集められることとなる。
「ジャック」


                              −第十幕へ−

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