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第一章 〜囚われの少女〜
潔癖症の少年と演劇団
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はいつもと同じ事だろうけどね)
 この手は何があっても汚れることはない。誰に触れることも、触れられることもない。
 こんな僕が一体、何の役に立つのだろう。そんな思いが時々ジャックの頭には過るのだった。


――


「狙いは、“花の都・オレリア”の財宝だ。 まずは、王女レナ姫を誘拐する! これがいちばん大事なんだ」
 銀髪を右胸に垂らしたその人は、いかにも男らしく言った。
 盗賊団『マスカレード』の団長だ。
 部屋の一番奥、長い背もたれのある椅子に腰かけている。団員は円卓を囲み、話を聞いた。
「やることは大体いつもと同じだが……今回の流れを伝えておく。アタシたちは、“劇団マスク・パレード”として、王宮に招待されている」
 この盗賊団の手口は独特で、劇団に成りすまし事を成す。
 貴族や富裕層など、お金や宝を握る者たちの娯楽といえば演劇だ。
 ターゲットは観客、若しくはその観客の住居である。芝居に夢中になっている隙を狙うのだ。
 といっても、この手は演劇に目のない者たちにのみ通用する。
 オレリアは、城下町の富裕層は大抵、演劇に熱を上げていると言われているので問題はないらしい。

「今回はこの盗賊団、始まって以来の大仕事だ。依頼人≪クライアント≫について今は言えねぇが……。とにかく、失敗は許されない」

(なんで、会議の時は言葉遣いが男になるんだ? でも、“アタシ”なのは変わらないのか)
 若干一名の少年を除いて、十数名程の団員は、息をのんで話に聞き入る。
 それでもその、丸眼鏡の少年がふざけているかというと、そう言うわけでもない。
 しかし蒼の瞳の奥では、今回もまたいつも通り、自分の仕事を全うするだけだと安心しきっている様子だった。

「ただし、今回はいつもと違うのよ」
 団長は少年の様子を見たのか見ていないのか、ここが重要なポイント、という風に声の調子を変える。
「劇の後の催しにも招待されたんだけど。クライアントの意向もあって、その催しにも参加することになったの。今回は、夜の催しの最中を狙うのよ♪」
「その催しというは何だ?」
 団員の一人、青年は問う。
「うふふ♪ よく聞いてくれたわ、さすがね♪ その催しはね……、王族主催の仮面舞踏会≪マスカレード≫なの♪」
 団長がそう言うと、その場には一瞬、歓喜の声が上がった。

 仮面舞踏会≪マスカレード≫とは。
 仮面をつけてさえいれば誰でも参加できる、いわゆるパーティの事。貴族や庶民、人種を問わずどんな人間でも参加できる。
 とはいえ……衣装を上手く着こなせてなかったり、立ち振る舞いが不自然だったりするとバレてしまう事もある。
 高級な衣装を身に纏える庶民は、ごく(わず)かなのだ。
 しかし富裕層の中でも変わり者だと、あえて庶民と思わせ
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