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第一章 〜囚われの少女〜
予告
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じられる。何か自分にできることはないだろうか。
「姫様。お節介かもしれませんが、ご不安を抱えていらっしゃいますか?」
 ドアの隙間の傍らに跪いたまま様子をうかがう。この場所でこうしておけば、ドアが開いたとしても頭をぶつける様なヘマはしない。
「ご心配には及びません。この、ダニエル・アンダーソン。命をかけて、姫様をお守り致します!」
 自分にできるのは、この気持ちを伝える事のみ。
 特にご返事を期待していたわけではなかったが、
「ぷっ」
――なんと、姫様はお笑いになった。
「ど、どうかされましたか?」
 姫の笑顔は、騎士の勲章。これは怪我の功名といったところだろうか。姫の笑顔のためなら、何を笑われようが気分は悪くない。
「……だって、あなたの話し方があんまり必死だったから……ついね」
 姫様の笑みとともに、開いた扉のすき間から光が溢れてきた。
 向こう側から、侍女が扉を押し開ける。
「笑ってしまってごめんなさい」
 深い、土色の瞳で真っ直ぐ、姫様はこちらを見つめていた。
 その姿にはいつも、つい見とれてしまう。
 透明感のあるなめらかな肌。栗色の髪はこれ以上伸ばせないという程に長く、それでいて(つや)やかだ。
「でも、ありがとう」
 姫様はきらびやかな絹色のドレスから、華奢(きゃしゃ)な腕をこちらに伸べられる。
 その(ひじ)から細い指先までは、上品に布のグローブに包まれており、貴賓を感じさせられるものだ。いつもながら、相変わらず見目麗しい。
「勿体ないお言葉にございます」
 自分の頬に添えられた小さな手を取り、軽く口づける。
(うるわ)しの姫君の微笑みを頂けたというのならば、このアンダーソン。身に余る光栄にございます!」
 姫様はまた、ふふっ、とお笑いになる。
「?」
 よくはわからないが、元気なご様子なので安心だ。
「姫様」
 姫の後ろから声がする。終始扉を押さえていた侍女が、腕の痺れを訴えようとでもしているのだろうか。
「なあに? キャスリン」
 そのお返事される様子は、姫様をとても無邪気な印象に思わせた。
「髪を結わせて頂きたいのですが、よろしいですか?」
 姫様よりも小柄なその侍女の名は、キャスリン・ワトソン。
 姫様に申し出た後、その深緑色の瞳は、冷ややかにこちらを見上げる。
「あなたは、扉の外を守るだけでよろしいのでは?」
 幼い印象があるものだから、その小さな口が放つ言葉は地味にエグい。だが、俺も男だ。このまま引き下がるわけには行かない。
 ……が。『相手は子供』と自分に言い聞かせ、ぐっと、紳士的にこらえる。
「では、姫様。私めは扉の外で待機しております。外出の際は、必ず私めをお頼りください。“女王様の命でございます”ので」
(どうだ、ワトソンめ。これなら口出しは
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