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第四章
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晴れやかになる。今までの杉浦はどうしても打てなかった。ストレートの他はカーブとシュートしかないのがわかっていてもだ。そのカーブとシュート、支えるコントロールが抜群だったからだ。だから打てなかったのだ。
「そしてうちの打線は強い」 
 次に自分が鍛え上げ作り上げた打線を出した。当時の西鉄は文句なしに強力な打線であった。流線型打線は球界でも屈指の強さを誇っていたのだ。
「攻略は可能だ」
「わかりました。それでは」
「一気に攻めます」
「勢いだけは殺すな」
 三原はまた選手達に告げた。
「一気に決めろ。いいな」
「はい!」
 今マウンドの杉浦を見据える。杉浦は毅然として立っていた。表情からは何も読み取れない。しかしその身体からは疲労が見えた。微かにではあるがその微かに見えるものこそがあまりにも大きいのだった。
 二番の小渕泰輔が内野安打で出た。これがはじまりだった。
「内野安打か」
「打ち取ったのにな」
 南海ファン達はこの勝負は杉浦の勝ちだと断定した。彼等は杉浦を超人だと確信していた。しかしこれに危惧を抱く者が南海にも二人いた。
「まずいな」
「まずいで」
 言葉が出された場所はそれぞれ違っていたが。監督である山本よキャッチャーである野村克也がそれぞれ今の内野安打を見て呟いた。彼等は杉浦が疲労の限界にあるのを見て取っていたのだ。
 野村は山本の方を見た。危機を彼に目で伝えたのだ。
「監督、ノムが」
 コーチの一人にもそれは伝わった。野村の仇名を口にして山本に伝える。
「あかんって言うてますで」
「ああ」 
 山本は腕を組み口を真一文字にしていた。彼にもそれは伝わっていたのだ。

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