第一部「数奇なる騎士」
第07話「一撃の代償」
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ゼンガーがグリップを握りなおす。
そのとき。
「ゼンガー少佐、撤退を。もう十分です。」
ゼンガーにリリー・ユンカースからの通信が入った。
「リリー中佐…、承知した。」
ゼンガーが答え、その巨体は引き上げていく。
「撤退か…」
ライトが呟く。
「追う必要は…、ないな。」
キョウスケも言った。
「自分はタカヤを。」
「わかった。」
会話を終え、ライトがグランバインを地上に下ろした。
「タカヤ、応答しろ、タカヤ。」
ライトが呼びかけるが、反応はない。
「タカヤ…」
ライトがグランバインを降り、大破したゲシュペンストに駆け寄る。
ゲシュペンストからはまだ火花が上がり、所々火を噴いている箇所もあった。
「……」
ライトが外部スイッチを押しても、反応はない。
強制排除スイッチも反応は見られなかった。
「やはり、電機系統は殆んどイカれているか。」
そういいながらライトは、電動ノコギリを取り出す。
「……」
ライトは無言でコックピットハッチを切り始める。
脆くなっていた部分も多く、切断は容易い。
5分かからないうちに切断が終わる。
ライトが思い切り一つ殴ると、ハッチの装甲板は剥がれる様に地面に落ちた。
「タカヤ。」
ライトが、無機質な声で呼びかける。
…やはり反応はない。
そのはずである。
タカヤは気を失っていた。
「…」
ライトは何も言わずにタカヤをコックピットから引きずり出し、背中に背負った。
「…すまない。」
ライトが、そっと呟いた。
***
「タカヤ!」
ヒリュウ改に戻ってすぐ、グランバインの元にミナミが駆け寄る。
「気を失っている。医務室まで運ぶ、手伝ってくれるか?」
ライトがタカヤを床に寝かせて言う。
「ライト…」
「…急ごう、出血するほど頭を強打している。早く処置をしないとまずい。」
ライトに言われ、ミナミがタカヤを見る。
応急処置で包帯が巻かれているものの、その包帯にすら血が滲んでいた。
「あ…あぁぁ…」
ミナミが崩れ落ちた。
このままタカヤが死ぬのではないか。
そんな思いがミナミを支配していった。
「ライト!タカヤくんは…!!」
ナナもやってきたが、状況を把握し切れていない。
「ナナ、ミナミを頼む。」
ライトはそう言って立ち去った。
「…うぅぅ…ぐぅ…ッ!」
ミナミが悲痛な嗚咽を零す。
ナナはただ、その弱り切った姿を見て抱きしめるのだった。
「…ッ…」
タカヤの眉が動き、表情が険しくなる。
「タカヤ?…タカヤ!タカヤ!!」
ミナミがその様子を見て、必死でタカヤの肩を叩く。
頭の傷口からは、まだ出血している。
血に染まって
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