『"Cannibal Candy"』
#4
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シンが手渡した瓶の中には彼の最愛の妹である赤羽撫子の遺灰が入っていたことを知っているのは、当事者たちと夜々以外には、恐らくクロスだけだろう。
ライシンは確信していたのだ。マグナスが、ライシンが『あの日』から今日まで生きてきた理由であると。復讐すべき因縁の相手だと――――
***
『?? ????? ?? "??" ?? ?????. ?? ?? ?? ????』
クロスがあの日であった《天使》から告げられた言葉だった。
「『世界の全てを見ろ。それがお前の役目』、か……」
世界中で、天使から聖なる『天啓』を受けた人間の例は数多く存在する。しかしクロスが受けたのは、そんな輝かしいものではない。完膚なきまでに全てを破壊され、強制的に実行された『神の祝福』。神の祝福を「死」ととらえる聖職者は多いと聞くが、まさにそれを体現したような『天啓』だった。
結果、クロスは自動人形の能力を『見る』力を始めとした、いくつかの能力と、特殊な自動人形《ラジエル》を入手するに至った。
「何をやらせたかったのかな、あいつは……」
《天使》が自分に何をさせたかったのか、よくわかっていない。「世界を見ろ」と言われただけでは当然だ。だから、それを突き止める。《魔王》となって、世界を隅々まで調べつくす。《天使》の目的を探す為に――――
「……《本》」
まだほとんど物がない工房と、壁一つ隔てた寝室で、クロスはラジエルの能力の一つを使う。空間がわれて、分厚い本が出現した。ページをめくると、その半分ほどは埋まっているが、もう半分は白紙のままだ。
これは、クロスの『見た』魔術回路を記してある本。そして、ラジエルの持つ魔術回路の『比喩的表現』とでも言うべき存在だった。
「このページがすべて埋まったら、何が起こるんだろうな……」
クロスはページをめくっていく。ふと、一つのページで指が止まる。そこに記されていたのは、《魔剣》系統の魔術回路の記述。脳裏に呼び起されるのは、銀色の龍を連れた、金色の髪の少女。
「シャルロット・ブリュー、か……自分で言っておいて何だが、案外本気なのかもしれないな、俺は」
朝、シャルに「どうして同じテーブルで食事をしているのか」という突込みに対して、冗談のつもりで言った「お前に惚れたから」。だがクロスは、あながち自分でそれを本気にしているのではないかと思ってしまった。
「まぁ、《夜会》は長いわけだしな……とにかく、今日はもう寝るか……今頃ライシンは何してるんだろうな」
クロスは《本》を元の《場所》に戻すと、布団をかぶって目を閉じた。
ライシンが夜々に夜這いされているなどつゆほどにも思わずに。
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