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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第八話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その2)
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、知っていたのか」
「……まあね」
俺の問いかけにエーリッヒは曖昧な表情で頷いた。

なるほど、既にブラウンシュバイク公爵家の事は調査済みだったか。おそらく親族であるフレーゲル男爵の事も調べたのだろう。その過程でベーネミュンデ侯爵夫人の事も調べた。となるとグレーザーの事も既に知っていた?

やれやれ、新公爵閣下は見かけによらず手強くなかなか喰えない。もっともそのくらいでないと仕えがいが無いのも確かだ。楽しくなりそうだな、思わず苦笑が漏れた。

「ミューゼル大将を誹謗していたそうだ、ミッターマイヤー少将のこともね」
「コルプト大尉の射殺を恨んでということだね」
「ああ、そうなる」
コルプト子爵は弟をミッターマイヤー少将に射殺された。非は軍規を乱したコルプト大尉にある。しかし子爵はそれを受け入れられないのだろう。

そしてミッターマイヤー少将はミューゼル大将の部下になった。ミッターマイヤー少将に復讐するにはミューゼル大将が邪魔だ。そこで子爵はミューゼル大将に敵意を持つベーネミュンデ侯爵夫人に目をつけた……。敢えて説明するまでもないだろう。

「どうする、エーリッヒ」
俺の問いかけにエーリッヒは視線を落とし伏し目がちになった。考え事をする時の癖だ。水が有れば飲んでいるところだな。

「グレーザー医師はブラウンシュバイク公爵家で庇護しよう。今回の一件の生き証人として使える」
「それで、コルプト子爵、ベーネミュンデ侯爵夫人は?」

「放置は出来ない、先ずはコルプト子爵を抑える必要があるだろうね。彼を抑えグレーザー医師がこちらに居るとなれば侯爵夫人も少しは大人しくなるだろう」
「いっその事ミューゼル大将、コルプト子爵、ベーネミュンデ侯爵夫人をまとめて始末するというのはどうだ」

冗談めかして提案したがエーリッヒは笑わなかった。少しの間俺を見ていたが俯くと考え込んだ。
「……」
「喉が渇いたな、水を持って来よう」
「うん」

生返事をするエーリッヒを部屋に残し水を取りに行く。本来なら誰か人を呼べばいいのだが今は一人にした方が良いだろう。やはりエーリッヒはミューゼル大将を恐れている。今のところ友好的ではあるが以前公爵になる前に言った通り、危険だという認識は変わっていない様だ。或いは払拭できずにいると言う事か……。

水を持って部屋の戻るとエーリッヒはまだ俯いていた。グラスを渡すと一口飲んでテーブルに戻す。
「で、どうする、やるか?」
問い掛けるとようやく顔を上げた。

「いや、それは駄目だ」
「……駄目か」
「うん、彼はこちらに協力的になっているし対同盟の事も有る」
エーリッヒの答えは自分を納得させようとしているかのようだった。かなり迷ったな。

「対同盟と言うと」
「手強い相手がいるからね。
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