アフターストーリー
アフター1 男のあの日
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この世界にやってきてから早一週間。
思えば、それはもう、激動の一週間だったように思う。ある日を境に唐突に、男女美醜の反転した世界に飛ばされて、好みど真ん中ドストライク三振ホームラン級の美少女が彼女になってくれて、あまつさえ童貞まで喪失してしまった。
まさに、人生の確変。底辺ボッチにして超絶ブサメン系男子でしかなかったこの僕が、この世界では正反対の――まさに、あべこべの扱いを受けて、もてはやされている。
親友と呼べる存在が居て、困ったことがあれば助けてくれる。色々と僕の常識が通用しないこの世界において、時に助言をしてくれて、時には窘めてくれる、彼の――荒井くんの存在は、何物にも代えがたい存在だ。
美人で可愛くて、最愛にして最高の恋人が居る。
彼女――翔子とは、まだ付き合い始めたばかりなのだけれど、既に僕のすべては彼女に骨抜きにされてしまっているわけで、残りの人生と全身全霊を賭けて、今の関係を守っていきたいと思える。
翔子のためだったら、死んでもいい。死の間際に、彼女が傍に居てくれたのであれば、きっと何も恐れることなく、安らかに逝けるに違いない。
――だから僕は、朦朧とする意識と満足に動かない身体に、必死に力を込めながら、ベッドの脇に投げ出されていた携帯電話を掴んだ。
「う、うぅうぅ……」
霞む視界の焦点をなんとか合わせながら、携帯を操作して、電話帳を開く。
震える指先でたどたどしくボタンを押して、翔子の電話番号を見つけ出し、そして通話ボタンをプッシュした。
「……ううぅ……、だるい……つらい……、気持ち悪い……」
コール音が耳元で鳴る。
『もしもし拓郎?』
ぴったりワンコール後、愛おしい声が、鼓膜を揺さぶった。
ただそれだけで、襲い来る絶望的な苦しみが、和らいだような気がした。
「……しょう、こ?」
『え……、た、拓郎? どうしたの、なにかあったの……?』
僕のかすれた声を聴いて、通話口越しの翔子の声に、緊張が走った。
「……、僕はもう、だめかもしれない……」
『だ、だめ? ねぇ、本当にどうしたの? 一体なにが……』
「今朝、目が覚めたら急に……、っ!? う、ぐううぅぅ……!!」
『た、拓郎? い、今の声、なに? どうしちゃったっていうのよ!?』
――また、“波”が来た。
僕は自分の身体を抱きしめるようにして蹲りながら、呻き声を溢してしまう。
全身を襲う悪寒。頭の中で戦争でも起きているのではないかというほどの激しい頭痛。
そして……口にするのすら憚られる、不可解で恐ろしい現象が、僕の身体に一部に起こっていた。
――僕は悟った。きっと、僕はもう死んでしまうに違いない。理由も原因もわからない。悲劇はいつだって
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