第四話 別れと出会い
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いるんだ・・・俺が殺した。」
もう一度、静かに言った。
(死んでいる・・・死んでいるんだ、俺が殺した・・・)
この人が言っている言葉が頭のなかを木霊している。
死んでいる。
死んだ。
死。
お母様が?
お父様が?
死んでいる?
もう一度、お母様とお父様の方を見る。
二人は寝ているように床に倒れている。
二人から赤黒い液体が流れ出ている。
それは、自分の下で池になっている。
生臭い匂いが鼻を突く。
少しずつ、少しずつ、
視界が歪んでくる。
前が見えない。
お母様、お父様が見えない。
眼が熱い。熱い。熱い。
身体が震える。
止まらない。
何かが、頬を伝う。
熱い何かが、頬を伝う。
溢れる。
何かが溢れて止まらない。
「うそだ・・・」
声が出た。
でもそれは、震えてきちんと言えていない。
「本当だ。」
誰かが答えた。
ずっと頬を熱いものが伝う。
前が見えない。
「うそだ!」
今度は大きな声が出た。
「本当だ!・・・お前の親は死んだ!」
大きな声で返される。
死んだ。
死んだ。
お母様が?
お父様が?
死んだ?
もう会えないの?
もう話せないの?
もう遊べないの?
二人の顔が浮かぶ。
二人と過ごした日々が浮かぶ。
優しいお母様。
心地いい声で僕の名前を呼んでくれるお母様。
ぎゅっと抱きしめてくれるお母様。
かっこいいお父様。
いつも一緒に遊んでくれたお父様。
大きな手で僕を抱えてくれたお父様。
色んな場面が駆けていく。
「あ、あぁああ・・・」
何も考えられない・・・
何も・・・
何も・・
『イナリ・・・イナリ・・・・イナリ・・』
どこか遠くで声が聞こえる。
『イナリ・・・』
また、声が聞こえる。
それに、何だか体が暖かい。
まるでお母様に抱きしめてもらっているみたい・・・
『イナリ!・・・』
「ん、んん・・」
『・・・気が付きましたか?』
少しずつ眼を開ける。
すると、自分の体が青白いものに覆われているのが分かる。
「なに、これ?」
これ、とっても暖かい。
『・・あなたが次の・・・ですよ・・・』
声がした。
意識が朦朧としていて、はっきり聞き取れなかった。
そこには自分の体よりも大きな白い狐が座っていた。
・・そこでまた気を失った・・・
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