第三話 宿命の日
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第三話 宿命の日
火の国歴55年6月11日〜12日 深夜 木の葉隠れの里 稲荷神社
イナリ
「よし、今日もきちんとお稲荷様におやすみなさいの挨拶ができた。お稲荷様、喜んでくれるかな?」
うきうきとした気持ちでつぶやく。
(お父様、お母様におやすみなさいもしたし、寝ようかな。)
狐の絵が描かれた布団に入り、さて、明日は何をしようかなと考える。
―そうだなぁ、
朝、お父様、お母様、におはようございますの挨拶をして、、っとお稲荷様にもしなくちゃ。
それから、ハナちゃんの家に遊びに行こうかな。
あ、それともカタナくんの家に行こうかな。
でも、お稲荷様の像のお掃除もしないとなぁ。。
お母様のお仕事の手伝いでもいいなぁ。
お母様、最近元気がなそうだったし・・・・うん、そうしよう。
お母様、元気になってくれるかな?
うん、大丈夫。なってくれるよね・・・
いつの間にか意識が遠くなり、体がふわっふわとしていた。
僕はそれに身を任せていった・・・・
カーンカンカンカン! カーンカンカン!
大きな音で目を覚ました。
金属を叩く甲高い音が忙しなく鳴っている。
「うーん、何?もう、あさぁ?」
眼を擦りながら、体を起こす。
「お母様?お父様?」
問い掛けても、返事はない。
いつも隣で寝ているはずの二人はそこにいない。
カーンカンカンカンと金属を叩く音が鳴り響いている。
これは境内で鳴っているのでなく、里中で鳴っているようだ。
やっと目が覚めてきた。
周囲はまだ暗い。朝はまだ来てないようだった。
何だろうと不安が大きくなる。
少しばかり体が強張っているのが分かる。
それでも助けを求めるかのように、寝床から移動し、縁側に出る扉を開けた。
刹那―
ぶわっと熱を持った空気がすごい勢いで入ってくる。
「あつっ!」
思わず目をつぶってしまう。
ゆっくりと、ゆっくりと目を開けると、
そこに飛び込んできたのは、
赤。
赤黒い。
真っ赤。
朱色。
いろんな言葉が思いつくけれど、そんな言葉をまとめて巻き込んでしまうようなそれは、目に映る一面、赤色だった。
「え?なにこれ?」
僕は目の前に見えるものが理解できなかった。
いつも縁側から見えるのは、大きく立派な木が鬱蒼と深緑の葉を生やしていて、その脇に倉庫がある。右を見れば、大人にはそこまで大きくはないものの、自分にとってはとても大きなお堂がある。
僕は生まれてからずっとここで過ごしてきた。
お稲荷様を祭り、お父様と遊び、お母様と境内の掃除をして。
僕は、ここが大好きだった。
でも、そこに今見えるのは、
縁側から見える大きな木がその深緑の葉、太
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